新井本の発見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/27 05:20 UTC 版)
横山は古典籍の蒐集家として有名であり、新井には資料提供者としても協力していた。横山は二種の古活字本竹取物語を所蔵しており、これを新井に提供したが、それだけでなく、古書店に手紙を出し、「「竹取」はどんな本でも、全部わたしへくれ」と依頼した。ある日、大阪の古書店の主人が横山の自宅を訪れ、金沢の旧家から買った本にあったという竹取物語の写本を持参した。江戸後期・文化十二年(1815年)写の粗末な写本であり、しかもやや高価であったが、横井はそれをいつものように新井に提供した。この写本こそが、一葉の伝後光厳院筆断簡(南北朝期・14世紀頃の写)、および江戸中期の宝永4年(1707年)に今井似閑が版本に校合した本文でのみ存在が確認されていた、古本系の本文を持つ写本だったのである。新井は「夢にまで熱望してゐた」写本の出現に「歓喜して、それからは殆ど夢中であつた」と記しており、新井からその価値を報告された横山は大変驚いたという。後にこの写本は新井本と名付けられ、新井信之(昭和19年/1944年)、南波浩(昭和35年/1960年)、中田剛直(昭和43年/1968年)によってそれぞれ独立した翻刻が刊行されている。なお現在に至るまで、他に古本系の写本は見つかっていない。
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