放射線防護とシーベルト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 01:52 UTC 版)
「シーベルト」の記事における「放射線防護とシーベルト」の解説
「自然放射線」および「環境放射線」も参照 人体が放射線にさらされる事を放射線被曝 (ほうしゃせんひばく) といい、人体は全世界で平均すると年間およそ 2.4 mSvの自然放射線にさらされている。放射線は量が多いほど人体に有害であるため、放射性物質を扱う環境にある人は、自分がどの程度の放射線を受けたのかを、常に厳密に管理しなくてはならない。その際に用いられる尺度の一つがシーベルトである。 胃のX線撮影1回分の線量は0.5–4 mSv、X線CTスキャンによる撮像1回分の線量は7–20 mSvである。 2 Svの放射線を全身に浴びると5 %の人が死亡し、4 Sv で50 %、7 Sv で99 %の人が死亡すると言われている。一方で、0.2 Sv以下の被曝では、急性の臨床的症状は認められないとされるが、こちらは長期的な影響について議論があり、また低線量の被曝についても「健康被害が生じた」として訴訟が起きている。 なお、一度に大きな線量を被曝した場合の線量単位にはシーベルトではなくグレイが用いられるが、X線とガンマ線による被曝に関しては数値に違いがない。 短時間・大線量被曝でシーベルトが用いられない理由は線量率効果である。なぜなら単位「シーベルト」に求められる性質のひとつは数値の加算可能性であり、ある時点Aでの被曝と別の時点Bでの被曝の影響を全体として評価する場合に、両者の評価数値を加算したものに意味がなければならないからである。同じ放射線を被曝しても線量率によって影響が異なるのであるから、低線量率被曝の評価数値と高線量率被曝の評価数値は加算できない。シーベルトは低線量率の被曝環境における人体への影響を評価することを目的とした単位である。 これに加えて、シーベルトはグレイに対して放射線種や対象組織による係数(厳密な数値ではない)を乗じて得るものなので、たとえ放射線種がX線やガンマ線であってもグレイと同等の厳密さを持つと考えてはならない。SI組立単位に入ってはいるが、シーベルトはあくまでも管理された環境における人体防護に主眼を置いた放射線管理・放射線防護のための単位であり、社会学的な単位とも言える。
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