抱合による統語論的変化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/14 02:05 UTC 版)
ふつう、名詞が抱合されると動詞がとる項(英語: argument:動詞の主語、たとえば、直接・間接目的語、手段、位置など)が1つ削除される働きがあり、このことが明示される言語もある。つまり、その動詞が他動詞ならば、直接目的語を抱合した動詞単語は形式的には自動詞となって、それが明示される。このような変化が起きない言語や、また少なくとも形態論的には明示されない言語もある。 スー諸語のラコタ語では、句「その男は材木を切っている」は他動詞として"wičháša ki čą ki kaksáhe"「男 - その - 材木 - その - 切って」とも、また自動詞として"wičháša ki čą-kaksáhe"「男 - その - 材木切って」とも表現できる。後者では独立の名詞語句"čą"「材木」が、語根となって動詞に抱合されている。前者で"čą"を既定していた"ki"「その」が、後者では消失している。抱合されてももとの名詞は削除されない場合もある。 オナイダ語(英語版)(オンタリオ州南部やウィスコンシン州で話されるイロコイ諸語の1つ)では、「類別名詞の抱合」がみられる。直接目的語として働く一般的な名詞は動詞に抱合できるが、より特定的な直接目的語はそのままの位置に置かれる。たとえば「私はこの豚を買った」は「私は-動物買った-この-豚を」と表現され、ここで抱合された動物が「類別名詞」である。この「類別名詞」は本来の意味の「類別辞」(名詞クラスに呼応する統語機能だけを持つ形態素)ではなくて、一般的な名詞としても用いられる。
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