打楽器の追加
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 10:24 UTC 版)
「交響曲第7番 (ブルックナー)」の記事における「打楽器の追加」の解説
第2楽章・177小節(スコア練習記号W)におけるシンバル、トライアングル、ティンパニの打楽器の取扱いが、この曲の版問題の顕著な項目としてあげられる。これは、自筆楽譜においては、スコアの五線紙とは別の簡約紙片に記され貼り付けられているものである。そしてこの紙片の上に“Gilt nicht”(「無効」の意)の文字が鉛筆で書かれている。ハースは、これはブルックナーの意志ではなく、初演に際して周囲の人々の意見に振り回されて追加したものであり、さらには、最終的に「無効」と取り消したものであると判断、これをスコアに採用しなかった。ノヴァークは、ここに記された“Gilt nicht”の文字を、ブルックナーの筆跡ではないと判断し、打楽器の追加がブルックナーの最終的な意図であると判断、これをスコアに採用した。 ノヴァークの判断については、現在の研究者からは否定的な見解が提起されはじめている。一つには“Gilt nicht”が、やはりブルックナー自身の筆跡ではないかという指摘である。もう一つは、これら打楽器の追加が「別の簡約紙片に記され貼り付けられた」ものでありながら、注釈なしにスコアの中に入れ込んで校訂譜としてしまったことである。この見方に立てばハースの判断が正しいことになる。しかしこの部分を“Gilt nicht”とするならば、なぜその簡約紙片を剥がすか、あるいは紙片全体に斜線をひくなどの処置を行わなかったのか、という疑問は残る。ちなみに、「初版」でも、打楽器は追加されている。 なお、実際の演奏に当たって、シンバルとトライアングルは使わずティンパニのみ使う指揮者もいるが、これは史料上の根拠があるものではなく、指揮者独自の判断によるものである。
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