恋文 (ブーシェの絵画)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/01 10:18 UTC 版)
| フランス語: La lettre d'amour 英語: The Love Letter |
|
| 作者 | フランソワ・ブーシェ |
|---|---|
| 製作年 | 1750年 |
| 種類 | キャンバス上に油彩 |
| 寸法 | 81.2 cm × 75.2 cm (32.0 in × 29.6 in) |
| 所蔵 | ナショナル・ギャラリー (ワシントン) |
『恋文』(こいぶみ、仏: La lettre d'amour, 英: The Love Letter)は、18世紀フランス・ロココ期の巨匠フランソワ・ブーシェが1750年にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。『二人の親友』(ふたりのしんゆう、英: The Love Letter)、『メッセンジャー』(英: Messenger)、『恋人たちの秘密の手紙』(こいびとたちのひみつのてがみ、英: The Lovers’Secret Mail)などとも呼ばれる[1][2]。画家の署名と制作年が記されている[1]。対作品の『中断された眠り』 (メトロポリタン美術館、ニューヨーク)[3] とともに1753年のサロン・ド・パリで大いに称賛され、ポンパドゥール夫人が所有していたベルヴュー城の装飾に用いられていた[1][2]。作品は1960年にティムケン (Timken) ・コレクションから取得されて以来[4]、ワシントン・ナショナル・ギャラリーに所蔵されている[2][4]。
作品
ブーシェは、生涯にわたって『牧歌的情景』 (エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルク) [5]や『彼らはブドウのことを考えているのですか』 (シカゴ美術館) [6]など「パストラル」 (牧歌) 主題の絵画を描いているが、この主題が確立されたのは1740年代末である[1][2]。
本作は、サイズ、構図、恋愛の主題で共通する『中断された眠り』の対作品となっている[1][2]。両作品は本来、新たに創造されたものではなく、1748年にブーシェがおそらく工房の助手の手を借りて制作した巨大なタペストリー用下絵をもとにしたものである[1]。
緑豊かな庭、あるいは田舎の森で、2人の若い女性がライオンの彫像の下にある石の台座にもたれかかっている。1人はハトの首に青いリボンで封筒を結びつけつつ、もう1人の女性を称賛の目で見つめている。あたりにたむろしている羊たちや犬の存在により、彼女たちは羊飼いであることがわかるが、ブーシェのほかの羊飼いたちのように彼女たちは責務に関心を払っていない。彼女たちは藁籠に花を集めたり、伝書鳩でメッセージを送ったりして一日を遊び暮らしているのである[1]。
ブーシェは田舎生活の現実というものには一切関心がなく、自身の装飾的絵画に女性の羊飼いを理想化された、官能的な主人公として登場させている。画家は、本作で女性たちのサテンのドレス、化粧を施された肌、気取らない、完璧な髪型の描写に意を注いでおり[1][2]、彼女たちは居心地良く設定された場所で完全にくつろいでいる[1]。
脚注
- ^ a b c d e f g h i “French Paintings of the Fifteenth through Eighteenth Centuries: The Love Letter, 1750”. ワシントン・ナショナル・ギャラリー公式サイト (英語). 2025年11月1日閲覧。
- ^ a b c d e f “The Love Letter”. Web Gallery of Artサイト (英語). 2025年11月1日閲覧。
- ^ “The Interrupted Sleep”. メトロポリタン美術館公式サイト (英語). 2025年10月30日閲覧。
- ^ a b “The Love Letter”. ワシントン・ナショナル・ギャラリー公式サイト (英語). 2025年11月1日閲覧。
- ^ 『NHK エルミタージュ美術館 2 ルネサンス・バロック・ロココ』、1989年、164頁。
- ^ “Are They Thinking about the Grape? (Pensent-ils au raisin?)”. シカゴ美術館公式サイト (英語). 2025年10月29日閲覧。
参考文献
- 五木寛之編著『NHK エルミタージュ美術館 2 ルネサンス・バロック・ロココ』、日本放送出版協会、1989年刊行 ISBN 4-14-008624-6
外部リンク
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