女羊飼いに笛を吹く羊飼い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/31 08:25 UTC 版)
| フランス語: Berger jouant de la flûte pour une bergère 英語: Shepherd Piping to a Shepherdess |
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| 作者 | フランソワ・ブーシェ |
|---|---|
| 製作年 | 1747-1750年ごろ |
| 種類 | キャンバス上に油彩 |
| 寸法 | 94 cm × 142 cm (37 in × 56 in) |
| 所蔵 | ウォレス・コレクション、ロンドン |
『女羊飼いに笛を吹く羊飼い』(おんなひつじかいにふえをふくひつじかい、仏: Berger jouant de la flûte pour une bergère, 英: Shepherd Piping to a Shepherdess)は、18世紀フランス・ロココ期の巨匠フランソワ・ブーシェが1747-1750年ごろ、キャンバス上に油彩で制作した絵画である。現在、ロンドンのウォレス・コレクションに所蔵されている[1][2]。
作品
本作は、『牧歌的情景』 (エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルク) [3]や『彼らはブドウのことを考えているのですか』 (シカゴ美術館) [4]などブーシェがたびたび描いてきた「パストラル」 (牧歌) を表す作品の1つである[1]。
アルカディア的な田園風景の中で、黄色のチュニックを着た若い羊飼いがフルートを奏でながら、足を伸ばして座っている。彼の脚の間には帽子が見える。背景では、羊の群れが穏やかに草を食んでいる。羊飼いの横では、赤いドレスをまとった羊飼いの娘が熱心に耳を傾けている。優しい笑顔で羊飼いを眺めている彼女は左手に花のいっぱい入った籠を持ち、右手に花の輪を持っている[2]。彼に花の冠と愛情という報酬を与えようとしているのである[1]。彼女の髪に着けられている花の輪は、周囲のバラと調和している。2人の背後には穏やかな風景が広がり、場面は温かな太陽の光に包まれている[2]。
ブーシェは、しばしばシャルル・シモン・ファヴァールの大人気を博したパントマイム劇の登場人物にインスピレーションを受けている[1]。ブーシェが舞台美術デザイナーを務め、熱心な観客でもあったオペラ・コミック (Opéra Comique) において、ファヴァールのミュージカルは、アルカディアの理想主義ならびに牧歌詩の貴族的繊細さを大衆劇の田舎風感傷主義と組み合わせたものであった。本作の情景は、1745年にファヴァールにより制作されたパントマイム劇『タンぺの谷の収穫 (Les Vendanges de Tempé)』の第5幕の開幕場面を示したもので、それは羊飼いが恋人のリゼットに笛を吹く情景となっている。本作は、おそらくファヴァールが舞台で成功した後に描かれた[1]。
なお、本作のオリジナルのキャンバスは不規則なもので、元来、作品が装飾プロジェクトの一環をなしていたことを示唆する。しかしながら、委嘱の経緯や一緒に制作された作品についてはわかっていない[1]。
脚注
- ^ a b c d e f “Shepherd Piping to a Shepherdess”. ウォレス・コレクション公式サイト (英語). 2025年10月31日閲覧。
- ^ a b c “女羊飼いに笛を吹く羊飼い”. Feel the Artサイト (日本語). 2025年10月31日閲覧。
- ^ 『NHK エルミタージュ美術館 2 ルネサンス・バロック・ロココ』、1989年、164頁。
- ^ “Are They Thinking about the Grape? (Pensent-ils au raisin?)”. シカゴ美術館公式サイト (英語). 2025年10月29日閲覧。
参考文献
- 五木寛之編著『NHK エルミタージュ美術館 2 ルネサンス・バロック・ロココ』、日本放送出版協会、1989年刊行 ISBN 4-14-008624-6
外部リンク
- 女羊飼いに笛を吹く羊飼いのページへのリンク