ヘラクレスとオンファレ (ブーシェ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/26 04:39 UTC 版)
| ロシア語: Геркулес и Омфала 英語: Hercules and Omphale |
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| 作者 | フランソワ・ブーシェ |
|---|---|
| 製作年 | 1731-1734年ごろ |
| 種類 | キャンバス上に油彩 |
| 寸法 | 90 cm × 74 cm (35 in × 29 in) |
| 所蔵 | プーシキン美術館、モスクワ |
『ヘラクレスとオンファレ』(露: Геркулес и Омфала、英: Hercules and Omphale)は、18世紀フランス・ロココ期の巨匠フランソワ・ブーシェが1731-1734年ごろ、キャンバス上に油彩で制作した絵画である。現在、モスクワのプーシキン美術館に所蔵されている[1][2]。
主題
ギリシア神話およびローマ神話のオンファレは、イアルダヌスの娘で、リュディア王トモーロスの妻であった。彼女はトモーロスの死後、王位に就いたが、その統治時代に、彼女に仕える奴隷となるべく神託を受けた半神のヘラクレスがやってきた。ヘラクレスとオンファレの愛の物語には様々な変種があるが、最も一般的なものは、オンファレがヘラクレスの力と業績を称賛して、彼を自由の身とし、自身の愛人、次いで夫としたというものである。しかし、オウィディウス、セネカなどによると、オンファレはヘラクレスが退治したネメアのライオンの毛皮と棍棒を身に着ける[3][4]一方で、彼に女の服装をさせ、羊毛を紡がせたという[3]。最終的にはオンファレの気持ちも変わり、結婚した2人は息子アゲラオ (Agelao) をもうける。
作品
ライオンの毛皮を纏い、棍棒を持つヘラクレスがオンファレの足元で糸紡ぎをする姿は、ルネサンスとバロックの美術で数多く表された。しかし、ブーシェは、あまり一般的ではない、それに続く場面、すなわち2人が恋の情熱に身を委ねる場面を取り上げた[5]。
画家は、リュディア宮廷の部屋として18世紀当時の豪華な室内に場面を設定し、ベッドに腰かけたヘラクレスは、彼にふさわしい情熱と力でオンファレに接吻している。ライオンの毛皮と糸巻棒を持って立ち去ろうとする2人の天使の姿が場面の緊張感を和らげているが、同時に恋人たちの雄弁なポーズによって強調されてもいる[5][6]。2人の描写、とりわけその裸体描写にはピーテル・パウル・ルーベンスの影響が明らかであるものの、ルーベンスの身体像ほど豊満ではなく、ロココの新しい洗練された趣味に合致している。色彩が情熱の緊張感を和らげており、柔かな色が柔らかな光と非常に自然に溶け合いつつ、オンファレの白い身体像を浮き彫りにしている[6]。なお、本作はブーシェの典型的な主題からはやや離れているものの、彼の絵画に見られる官能性には事欠かない[7]。
脚注
- ^ Bussagli (2001) (イタリア語). Arte e erotismo. Electa. ISBN 978-88-435-7684-5
- ^ “Hercules and Omphale”. pushkinmuseum.art (ロシア語). 2024年2月13日閲覧.
- ^ a b “Hercule et Omphale: Hercule filant la laine auprès d’Omphale”. ルーヴル美術館公式サイト (フランス語). 2024年7月4日閲覧。
- ^ 『国立西洋美術館名作選』、2016年、61頁
- ^ a b Leotta (2015-03-15) (イタリア語). Col volto reclinato sulla sinistra. Lulu.com. ISBN 978-88-6711-024-7
- ^ a b François Boucher, 1703-1770 1986, p. 122.
- ^ Hugh Honour, John Fleming The Visual Arts: a History, Editorial Reverté, 1987, p. 466.
参考文献
- 『国立西洋美術館名作選』、国立西洋美術館、2016年刊行 ISBN 978-4-907442-13-2
- François Boucher, Detroit Institute of Arts, Réunion des musées nationaux (France), François Boucher, 1703-1770, Metropolitan Museum of Art, 1986.
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