エウロペの略奪 (ブーシェ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/22 09:07 UTC 版)
| フランス語: L'enlèvement d'Europe 英語: The Abduction of Europa |
|
| 作者 | フランソワ・ブーシェ |
|---|---|
| 製作年 | 1747年 |
| 種類 | キャンバス上に油彩 |
| 寸法 | 160.5 cm × 193.5 cm (63.2 in × 76.2 in) |
| 所蔵 | ルーヴル美術館、パリ |
『エウロペの略奪』(エウロペのりゃくだつ、仏: L'enlèvement d'Europe、英: The Abduction of Europa)は、18世紀フランス・ロココ期の巨匠フランソワ・ブーシェが1747年にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。1747年に王立絵画彫刻アカデミーの画家たちの間でコンクールが行われた際に展示され、フランス王ルイ15世が買い上げた[1][2]。作品は1871年以来、パリのルーヴル美術館に所蔵されている[1][2]。
作品
この絵画の主題はオウィディウスの『変身物語』から採られている。ルネサンス以降、画家たちに好まれた主題で、16世紀ヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノの『エウロペの略奪』 (イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館、ボストン) は特に名高い[2]。
神々の王であるユピテルは多くの神々、人間との間に関係を持った。その人間の1人がエウロペである[3]。ある日、オリュンポス山の宮殿から地上を見渡していたユピテルは、フェニキアの海辺で遊ぶ美少女に一目ぼれをする。彼女はフェニキア王アゲーノールの娘で、エウロペという名であった。ユピテルは彼女に近づくため牡牛に姿を変え、彼女のそばにうずくまる。すると、エウロペは、雪のように純白で優しい瞳をしている牛に見惚れてしまう。彼女が気を許して牛の背にまたがると、牛は突然立ち上がり、彼女を乗せたまま一目散に海へと泳ぎ出した。しまいに、牛はクレタ島に彼女を連れ去り、ユピテルとしての正体を明かして彼女と交わる[3]。
本作は、略奪される直前のエウロペが、ユピテルが変身した白い牡牛に座っている姿を表わしている[4]。胸を露わにした若い娘のエウロペは、ネーレーイスやほかのトリトンたちに取り囲まれている。彼女の頭上では、キューピッドが空を飛翔し、ユピテルのアトリビュート (人物を特定する事物) である鷲を見ている。ブーシェは、この場面を対角線を強調した動きの多い構図に見事にまとめ上げている。さまざまなポーズを見せながら空中を舞うキューピッドたちは、軽快な華やかさをいっそう強調している[2]。
脚注
参考文献
- 坂本満 責任編集『NHKルーブル美術館VI フランス芸術の華』、日本放送出版協会、1986年刊行 ISBN 4-14-008426-X
- 吉田敦彦『名画で読み解く「ギリシア神話」、世界文化社、2013年刊行 ISBN 978-4-418-13224-9
外部リンク
- エウロペの略奪_(ブーシェ)のページへのリンク