層ができる仕組み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2013/06/25 16:29 UTC 版)
このような分布を見れば、それぞれの生物が、それぞれ異なった好みによって生活場所を選んだ結果と考えられがちであるが、必ずしもそうではないことに注意すべきである。 例えば海岸線の場合、満潮線付近に分布帯を作るフジツボは、満潮時前後にだけ海水を被る。そして、この時間帯に餌を取り、あとの時間は殻をふさいで耐え続ける生活をしている。そのような耐久能力があるからその場所で生活できるのではあるが、そのことは、そのフジツボにとって、そこが最適な生息環境であることを意味しない。実際、例えば新しい護岸ができた時などに、フジツボの付着を観察すると、他の生物が付着しない間は、普通に見られる水準よりずっと下まで付着するのが見られるという。つまり、フジツボの生活に適する水準と、実際に海岸線で生活している水準は、必ずしも同じではないのである。むしろ、このフジツボの場合、もっと低い水準、一般に暮らし易いはずの場所の方が、彼らにとっても暮らし易いのであろう。しかし、他の生物が付着し始めると、次第にふだん見られる水準に限定される、つまり、岩場に付着するほかの生物との競争に負けたと考えるべきである。 あるいは、このような極端に厳しい環境で暮らす生物の場合、特殊な耐久能力を身につけたことで、競争の少ない場所に逃げ場を見いだし、それによって生き延びていると見た方がいいのかもしれない。 このように、互いに分布域がぶつかっている場合、それぞれの種の性質だけでなく、種間の関係によって分布域が決まる場合は多い。したがって、その分布域が、その種にとって好ましい条件の場であるとは限らない。このため、しばしば帯状分布の一方の端における分布は物理的要因で、反対のもう一方の端における分布は種間関係で規定されると判断できる場合が多い。 他方、このような種間関係以外にも、分布を決める要因はあり得る。例えば、フジツボの場合、幼生はプランクトンとして暮らし、その後にキプリス幼生とよばれる幼生となり、岩の上を這って定着する場を探すが、この時、同種の親が見つかるとすぐそばに定着しようとする性質がある。このことは、彼らが密集した集団を作りやすい要因の一つになっている。
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