天狗の隠れ蓑
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/05/05 03:12 UTC 版)
非常によく知られた説話であり、彦一話を代表する話である。彦一の家の近くの山に住んでいる天狗は、着ると姿を消すことのできる隠れ蓑を持っていた。彦一は天狗の隠れ蓑が欲しくてたまらなかった。そこで彼は知恵を働かせ、竹を一本切り、あたかも遠くを眺めているかのようにはしゃぐのだった。それを見ていた天狗は「それは何か」と尋ねたところ、「これは遠眼鏡じゃ。遠くにある物、何でも見えよる」と言い返す。譲ってくれと天狗は頼むが、彦一は譲らない。それならば隠れ蓑と交換してくれと天狗が言うと、彦一はすぐさま竹筒を手放し、素早く隠れ蓑を身に付けてしまった。一方、竹筒を覗いても何も見えず、騙されたと知った天狗は怒るが、既に彦一の姿は見えなかった。彼はまず家に帰って妻を驚かせる。調子に乗った彦一は色々と悪戯を思いついては実行し、あげくの果てには酒屋に忍び込み、好物の酒をぐびぐびと呑んでしまうのだった。そして彼は酔っぱらい、家に帰るや熟睡してしまった。その間に、妻が蓑をがらくたと勘違いして竈(かまど)で燃やしてしまう。目を覚ました彦一は蓑がないので妻に問いただし、「蓑は燃やした」と言われてびっくりするが時既に遅し。しかし、試しに残った灰を体に付けてみたところ、ものの見事に姿を消すことが出来たので、彼は喜び、まだ呑み足りないのか再び酒屋に駆け付けた。しかし、今度は酒を呑んだことによって、口の部分の灰が剥げてしまい、彦一の口だけが空中に浮いている形となった。それを見て「お化けだ!」と驚いた酒屋の主人に追い回され、最終的に彦一は川に落ちて灰が全部流れ、みっともない裸をさらしてみんなの笑い者になってしまったのだった。
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