大型貫通爆弾とは? わかりやすく解説

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大型貫通爆弾

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/23 09:42 UTC 版)

GBU-57 MOP

大型貫通爆弾(おおがたかんつうばくだん、Massive Ordnance Penetrator、MOP)とは、アメリカで実戦配備中[1]の大型地中貫通爆弾の1つである。

アメリカ軍における制式名称は、GBU-57A/B

概要

アメリカ空軍によって開発された30,000ポンド(約13,600kg)、全長6mに及ぶ「バンカーバスター」精密誘導爆弾[2]。この爆弾はこれまで最大の重量を持ち、貫通力は61mのスペックを持つ[2]。これはGBU-28(重量5,000ポンド(約2,270kg)、貫通力30m)よりも、総重量、威力ともに大きなものとなる。

MOPの開発は、フロリダ州エグリン空軍基地英語版内の軍需品理事会、アメリカ空軍研究所で進められ、設計と試験作業は米ボーイング社によっても行われた。主に強固な地下要塞・地下弾道ミサイル・地下指令所の精密破壊用として必要な場合に使用される。

B-2[3]B-52Hに統合されており、GPSを使用して誘導される[4]。爆弾本体には推進装置がついておらず、高高度からの自由落下による加速と、莫大な自重により、大規模な運動エネルギーを生み出すことで地中への貫通を実現する。人工衛星からの信号を元に、尾翼を動かすことで軌道を調整し、目的の地点を目指す[5]

2014年度以降、ETR-IIIおよびETR-IV型とよばれる改善型がリリースされている。また空軍では妨害防止コードM GPS信号をMOPに統合するよう努めている[4]

開発

2002年に米ノースロップ・グラマンと米ロッキード・マーティンは、「ビッグブルー」(Big Blue)として知られた30,000ポンドの地中貫通兵器の開発を行っていたが、財政的な理由と技術的な理由によって開発は中断されていた。

2003年のイラク戦争の後に、バンカーバスター爆弾によって目標とされた攻撃跡地を分析したところ、不十分な貫通力と不満足な破壊力が明らかとなった[要出典]。そこで非常に巨大なバンカーバスターの開発への関心が再燃し、MOPプロジェクトが開始された。アメリカ空軍には、超巨大爆弾に対する軍としての特段の要求はなかったが、大きなサイズの貫通および爆風型の兵器を収集する構想は存在し、それは大規模爆風爆弾(Massive Ordnance Air Blast bombMOAB)を含む「ビッグブルー」(Big BLU)コレクションと呼ばれた。

2007年7月19日に、ノースロップ・グラマンは250万米ドルステルス爆撃機を改修する契約を明らかにした。機数は公表されていないが、各機が2基ずつのMOPを運搬可能なよう改修される[6][7]

2007年3月14日に、ニューメキシコ州ホワイトサンズ・ミサイル実験場アメリカ国防脅威削減局(Defense Threat Reduction Agency, DTRA)の保有するトンネル内でMOPの最初の爆発試験が行われた。

2018年1月、ブルームバーグはGBU-57 の4回目のアップグレードが完了し、既存の在庫分も改装されていると空軍のスポークスマンであるエミリー・グラボウスキ大尉は電子メールを引用して報じた。この改装により、地中深く埋められた固い目標に対する性能が改善される[8]

2023年5月、空軍が発表したフェイスブックの写真に新型のGBU-57が写っていたことが明らかにされている[9]

2025年6月、イランの核施設へのアメリカの攻撃ミズーリ州ホワイトマン空軍基地を飛び立った6機のB-2ステルス戦略爆撃機により計12発のGBU-57A/B MOPがフォルドウの核施設へ向けて投下されたほか、別動機の1機から2発のMOPがナタンズの核施設攻撃のために投下され、少なくとも計14発の当該弾が初の実戦において使用されたと報じられた[10] [11]

配備

2007年12月、実物大模型の公表とともに、本爆弾が既にミズーリ州ホワイトマン空軍基地の第509爆撃隊のB-2搭載用に実戦配備されたと発表された。この模型は中央側面に巨大な4枚のフィンを持ち、GPSによって誘導され、正確に目標地点に命中した後、直径80cmの弾体が地中に70m以上貫通、爆発するとされた[12]

2011年11月、米空軍地球規模攻撃軍団にMOPの納入が開始され、「現状必要とされる性能要求を満たす」とされた。2012年3月時点で、16個のMOPがホワイトマン空軍基地に配備されている[1][13]

2018年2月8日、新しいバッジのMOP調達のための2,100万ドルの契約をボーイングと結んだ。空軍は、2020年7月31日より前倒しでの出荷開始を期待している[4]

ギャラリー

要目

  • 全長 - 20.5フィート (6.2 m)[14]
  • 直径 - 31.5インチ (0.8 m)[14]
  • 重量 - 30,000ポンド(約13.6トン
  • 弾頭 - 6,000ポンド(約2.7トン)爆薬
  • 貫通力
    • 200フィート(60m) - 5,000psi(35MPa)、コンクリート
    • 26フィート(8m) - 10,000psi(69MPa)、強化コンクリート
    • 130フィート(40m) - 中程度に堅い岩

登場作品

シン・ゴジラ
大型貫通爆弾をモデルとした「MOP2大型貫通爆弾」が登場。B-2戦略爆撃機からゴジラに対して6発投下され、そのうち2発は表皮を突き破ってダメージを与えることに成功するも、残り4発はゴジラの放射熱線の迎撃によって破壊されてしまう。
シン・ウルトラマン
田村班長のセリフのみに登場。その後、宗像室長が米軍にただの「地中貫通型爆弾」を要請した。

脚注

  1. ^ a b Air Force Now Has the MOP
  2. ^ a b Anthony Capaccio; Courtney McBride (2025年6月20日). “イラン核施設を破壊し得る「バンカーバスター」とは”. Bloomberg. https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-20/SY3WZIDWLU6800 2025年6月22日閲覧。 {{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ)
  3. ^ Air Force ready to deploy 30,000-pound 'super bomb' on stealthy B-2 jet
  4. ^ a b c USAF commissions Boeing to build more MOPs
  5. ^ “トランプ氏、米軍がイランの核施設3カ所を爆撃し破壊と発表 フォルドなど”. BBC. (2025年6月22日). https://www.bbc.com/japanese/articles/cvg9r4wyv4xo 2025年6月22日閲覧。  {{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ)
  6. ^ Feature - 30,000-pound bomb reaches milestone 2009-01-18 閲覧
  7. ^ Northrop Grumman Begins Work to Equip B-2 Bomber with Massive Penetrator Weapon
  8. ^ U.S. Upgrades Its Biggest Non-Nuclear Bomb - Bloomberg
  9. ^ 北朝鮮の地下核施設打撃用? 米空軍SNSで突然削除された写真に関心集中”. 中央日報 (2023年5月23日). 2023年5月23日閲覧。
  10. ^ “米、B2爆撃機から超大型バンカーバスター投下か イラン核施設空爆”. 朝日新聞. (2025年6月22日). https://www.asahi.com/articles/AST6Q15JLT6QUHBI00BM.html 2025年6月22日閲覧。 
  11. ^ 米、B2爆撃機6機で「バンカーバスター」12発投下 フォルドゥ核施設への攻撃”. CNN (2025年6月22日). 2025年6月22日閲覧。
  12. ^ 軍事研究 『ミリタリーニュース』(株)ジャパン・ミリタリー・レビュー 2008年12月号
  13. ^ “Key Point: Bunker-Busters Come In Both Small and Large Sizes” (英語). TIME. (2012年3月9日). http://nation.time.com/2012/03/09/key-point-bunker-busters-come-in-both-small-and-large-sizes/ 
  14. ^ a b DTRA Fact Sheets”. Defense Threat Reduction Agency (2007年7月). 2009年2月時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年11月1日閲覧。

関連項目

外部リンク



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