多賀町の植物相
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 15:06 UTC 版)
河内風穴の位置する多賀町は裏日本植物区系(山陰地区)と表日本植物区系(瀬戸内地区)の境界に位置するため、日本海側の植物と太平洋側の植物の何れもが分布している。また、河内風穴のような石灰洞があるように、石灰岩地域の分布により好石灰岩植物が見られる。 石灰岩地は土壌の発達が悪く乾燥する上に、土壌中のカルシウムやマグネシウムの含有量が多く、塩基性に偏っている。好石灰岩植物はそういった環境に生理的適応性を獲得した植物であり、Shimizu (1962-1963)により3群に分けられている。第Ⅰ群は石灰岩地に見られるもの、第Ⅱ群は石灰岩地に特に多いが、その他でも生えているもの、第Ⅲ群は石灰岩地に限らずそうでないところにも棲息するが、石灰岩地に多いものを指す。 この地域が分布の境界となっている植物もある。芹川の上流域に分布するサツキヒナノウスツボ Scrophularia musashiensis Bonatiは近畿では鈴鹿山地以外に棲息せず、分布の西限である。河内風穴付近に棲息する好石灰岩植物(第Ⅲ群)のクロタキカズラ Hosiea japonica (Makino) Makinoは分布の東限である。好石灰岩植物で、芹川上流部の石灰岩地に多く産するスズシロソウ Arabis flagellosa Miq.(第Ⅲ群)やイブキシモツケ Spiraea dasyantha Bunge(第Ⅱ群)も鈴鹿山地が分布の東限に位置する。 上記の植物に加え、河内風穴の位置するエチガ谷や権現谷など芹川上流部に棲息する植物は以下のものが挙げられる。 ヒメフウロ Geranium robertianum L. - 好石灰岩植物(第Ⅰ群) オウギカズラ Ajuga japonica Miq. ヨコグラノキ Berchemiella berchemiaefolia (Makino) Nakai - 好石灰岩植物(第Ⅲ群) レンプクソウ Adoxa moschatellina L. ヤマトグサ Theligonum japonica Okubo et Makino クモノスシダ Asplenium ruprechtii Kurata - 好石灰岩植物(第Ⅱ群) また、周辺の集落である大字甲頭倉にはアズマイチゲ Anemone raddeana Regel、キバナノアマナ Gagea lutea (L.) Ker Gawl.、キクザキイチゲ Anemone pseudoaltaica H.Hara、セツブンソウ Eranthis pinnatifida Maxim.やフクジュソウ Adonis multiflora Franch.が、大字屏風にはヒロハノアマナ Amana erythronioides (Baker) D.Y.Tan et D.Y.Hong、大字向之倉にはカワノリ Prasiola japonica Yatabeが、また白谷にはイナベアザミ Cirsium magofukui Kitam.やタイミンガサ Parasenecio peltifolius (Makino) H. Koyamaが、鍋尻山にはウスゲレイジンソウ Aconitum pterocaule Koidz. var. glabrescens Tamuraや好石灰岩植物(第Ⅰ群)のイワツクバネウツギ Zabelia integrifolia (Koidz.) Makino ex Ikuse et S.Kuros.が分布する。更に、河内風穴より少し北にある落合集落は分布地理学上重要な地域である。
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