夏目雅子のヒロイン抜擢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 07:35 UTC 版)
「鬼龍院花子の生涯」の記事における「夏目雅子のヒロイン抜擢」の解説
スタートから頓挫しかけてきたころ、夏目の名が挙がり、夏目が五社に電話してきた。「わたしはモデル上がりの女優の卵です。今度の映画の企画のことを知りました。ぜひ、わたしにやらせてください」。ハキハキした声でこう話すと10分もたたぬうちに、五社の自宅に夏目が訪問してきた。直接交渉には応じない流儀の五社は、直ちに「帰ってくれ」と口を出しかけたとき、いきなり夏目は『鬼龍院花子の生涯』の台本を玄関の土間に置くと、その上に正座して両手を突いて「このホンにのりました」と言った。テレビドラマ『西遊記』での 三蔵法師のイメージしか、五社は夏目に対して持っていなかったが、意表を突かれ思案する余裕も与えない夏目の火のような熱意を感じたと述べている。日下部は和田勉が演出したNHKドラマ『ザ・商社』(1980年)で、毅然と脱いでヌードを披露していた夏目を「この子は脱げる」と推薦したと話している。 五社の娘・巴は著書で、東映の社史に書かれた上記の五社の話は作り話で実際はプロデューサーの事務所で夏目はマネージャー同伴で五社と初めて逢い、初対面の時から物怖じすることなく、人懐っこい笑みで「松恵の役を自分ができたらラッキーだ」と屈託なく話した夏目の度胸と凛とした美貌を大層気に入り抜擢が決まった、というのが真相と書いている。五社巴は「サービス精神が旺盛な父が、ときとして会話さえも相手が喜ぶように自分流に脚色したのではないか」と述べている。夏目は当時既に人気を得てはいたが、映画のヒロインを張るにはまだ新人。映画はヒットしないんじゃないかと思われた。東映の製作サイドは最後まで渋ったが、セットが完成していたこともあり、どうにかクランクインとなった。夏目は文学座(其田事務所)に所属していたため、岡田が文学座に出向いて同郷の杉村春子に夏目起用の了承を得た。岡田は「松恵の役にはまる女優がなかなか見つからず、製作は一時中断に追い込まれた。それから皆が必死に女優探しに走り回ってようやく発掘したのが文学座に所属していた夏目雅子さんである」と話している。
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