基底状態の組み入れ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 13:52 UTC 版)
全粒子数はグランドポテンシャルから次のように与えられる。 N = − z ∂ Ω ∂ z ≈ Li α ( z ) ( β E c ) α {\displaystyle N=-z{\frac {\partial \Omega }{\partial z}}\approx {\frac {{\textrm {Li}}_{\alpha }(z)}{(\beta E_{c})^{\alpha }}}} 多重対数関数項は実で正でなければならず、最大値は z = 1 のときで ζ(α) に等しい。ここで ζ はリーマンゼータ関数である。N を固定すると、β の最大値は臨界値 βc で、このとき以下のようになる。 N = ζ ( α ) ( β c E c ) α {\displaystyle N={\frac {\zeta (\alpha )}{(\beta _{c}E_{c})^{\alpha }}}} これは臨界温度 Tc = 1/kβc に相当し、これ以下ではトーマス=フェルミ近似は破綻する。上記の方程式は臨界温度について解くことができ、次のようになる。 T c = ( N ζ ( α ) ) 1 / α E c k {\displaystyle T_{c}=\left({\frac {N}{\zeta (\alpha )}}\right)^{1/\alpha }{\frac {E_{c}}{k}}} たとえば α = 3/2 で、上述の値 Ec を用いると、次のようになる。 T c = ( N V f ζ ( 3 / 2 ) ) 2 / 3 h 2 2 π m k {\displaystyle T_{c}=\left({\frac {N}{Vf\zeta (3/2)}}\right)^{2/3}{\frac {h^{2}}{2\pi mk}}} さらに、ここでは臨界温度以下の結果を計算することはできない。なぜなら上記の方程式を用いた粒子数は負になるからである。ここでの問題点は、トーマス=フェルミ近似は基底状態の縮退度を0としていることで、これは間違っている。凝縮を受け入れる基底状態が無いため方程式が破綻する。しかし上記の方程式は励起状態では粒子数を比較的正確に評価しており、そこへ基底状態を単純に付け加えることは悪い近似ではないことがわかる。 N = N 0 + Li α ( z ) ( β E c ) α {\displaystyle N=N_{0}+{\frac {{\textrm {Li}}_{\alpha }(z)}{(\beta E_{c})^{\alpha }}}} ここで N0 は基底状態凝縮の粒子数で、次のように与えられる。 N 0 = g 0 z 1 − z {\displaystyle N_{0}={\frac {g_{0}\,z}{1-z}}} この方程式は絶対零度まで解くことができる。図1に α = 3/2 におけるこの方程式の解の結果を示す。これは箱の中のボース気体に相当し、k = εc = 1 とする。実線は N = 10,000 の場合、点線は N = 1,000 の場合を示す。黒線は励起粒子の割合 1 − N0/N 、青線は凝縮粒子の割合 N0/N で、赤線は化学ポテンシャル μ にマイナス符号をつけたもの、緑線は z の値である。 横軸は次のように定義される正規化された温度 τ である。 τ = T T c {\displaystyle \tau ={\frac {T}{T_{c}}}} μ や z は低温の極限で τα と線形になり、N0/N は高温の極限で 1/τα と線形になることが伺える。粒子数が増加すると、凝縮の割合と励起の割合は臨界温度で不連続になる。 粒子数の方程式は正規化された温度で表される。 N = g 0 z 1 − z + N Li α ( z ) ζ ( α ) τ α {\displaystyle N={\frac {g_{0}\,z}{1-z}}+N~{\frac {{\textrm {Li}}_{\alpha }(z)}{\zeta (\alpha )}}~\tau ^{\alpha }} N と τ が与えられると、この方程式は τα について解くことができ、z についての級数解は、τα のべき乗または τα の逆べき乗での漸近展開としての級数の反転の方法によって得ることができる。これらの展開から、T = 0 近くでのガスの振る舞いを知ることができる。T が無限大でマクスウェル-ボルツマン分布となる。特に我々が興味があるのは T が無限大のときで、これは上記の展開から容易に決定する。
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