執筆背景・動機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/14 10:19 UTC 版)
福永によれば『廃市』は雑誌に2回か3回続きの予定で執筆したもので、「九州の田舎の旧家を舞台に、なるべく抒情的な、分りやすい作品」にするつもりであったという。ただ二十数年間、福永は出身地の九州へは帰ったことがなく、特にモデルと考えられる柳河(福岡県柳川市)には一度も訪れたことがなかった。ただ福永自身は、「私は背景として、掘割の多い、或る古びた町を用いただけですから、実際の柳河と掛け離れたものになったとしても、それは寧ろ私の思う壺だった筈です」と述べている。。西原千博も、以下の福永の言葉から、「柳川はモデルではあるかもしれないが、あくまでもこの作品は架空の場所として捉えるべきであろう」としている。 僕は北原白秋の「おもひで」序文からこの言葉を借りて来たが、白秋がその郷里柳河を廃市と呼んだのに対して、僕の作品の舞台は全く架空の場所である。そこのところが、同じロマネスクな発想でも白秋と僕とではまるで違うから、どうかnowhereとして読んでいただきたい。 — 福永武彦「後記」『廃市』(新潮社、1960年) また福永は、白秋の『水の構図』という柳河の写真集は、自身の愛好する本の一つであることを述べており、西原はこの写真集について、「映されている柳川は写真がモノクロのせいもあって、現在から見るとなおのこと「廃市」を思わせるものがある」と述べている。
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