地獄は永遠か・全てが救われるのか
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/14 15:11 UTC 版)
「地獄 (キリスト教)」の記事における「地獄は永遠か・全てが救われるのか」の解説
地獄は永遠であるのかという問題については、ロシア正教会の渉外局長である府主教イラリオン・アルフェエフが、聖大土曜日のカノンの祈祷文と、ニッサのグリゴリイ(グレゴリオス)およびシリアのイサアクの言葉を根拠としつつ、ゲエンナの世界は終わりを迎え、地獄は駆逐されるが、その終末がいつであるかは人の知恵では知りえない機密のうちに隠されているとする。オリゲネス主義者が断罪されたのは、アポカタスタシス(全面復活)思想を合理的に証明し、地獄の苦しみが永遠ではない事を証明しようとしたことによるのであり、これは神慮に属することを思想的投機の対象としてはならないためであったとする。死者のために祈る事の必要性と、神に不可能な事はない事についても、イラリオンは正教要理と同様の聖書の箇所、およびロマ書 9:16とペトル後書 3:9を挙げつつ言及している。イラリオンによれば、正教教理はオリゲネス主義的なアポカタスタシスの理解を避けるが、聖体礼儀および機密体験による全ての人々の救いへの期待は否定しない。 全てが救われるのかという問題については、英国在住の府主教カリストス・ウェアも言及している。カリストスはティモフェイ前書 2:4に示された「全ての人が救われるように」との神の望みが挫折するだろうと考えるべきか、それとも悪魔を含めた一切の知的被造物が救われると考えるべきかという問いを立て次のように述べている。 カリストス・ウェアによれば、オリゲネスは万物救済論を主張して断罪されたが、他方、ニッサのグリゴリイは悪魔も救われるとの希望を抱いたものの、オリゲネスよりずっと慎重に語ったために断罪を免れた。このように、制限された形ではあるが、アポカタスシス(万物の回復)は正教の中で一定の位置付けを与えられている。神の被造物に対する究極的な計画は誰にも測り知れない神秘であり、多くを語り過ぎないようにしなければならない。しかし少なくとも以下の二つのことは言える。 神は我々に自由意志を与え、その賜物を決して取上げられない。どんな時でも我々は神に対して「否」ということを選びうる。 私たちが「否」と言ってもなお、神の我々への愛は尽きない。 カリストス・ウェアは、これより先に進んではならないとしている。
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