地域生活
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 18:03 UTC 版)
バリ島の地域社会では、バリ・ヒンドゥーに基づく独特な慣習様式(アダット)に従った生活が営まれており、オランダ植民地化以後も近代行政(ディナス)と併存するかたちで続いている。21世紀に入ってもなお、バンジャールやデサと呼ばれる地域コミュニティをベースとして、さまざまな労働作業(ゴトン・ロヨン)や宗教儀礼が共同で執り行われており、バンジャールからの追放は「死」に等しいとまでされているほどである。 また、バリの人々は、特定の目的ごとに「スカ」ないし「スカハ」と呼ばれるグループを形成して対応することが多い。たとえば、ガムラン演奏団、青年団、舞踊団、自警団、合唱団といった具合に、スカはときにバンジャールを超えて形成され、多くはバンジャールと異なり加入・脱退が自由である。こうしたありようをギアツは「多元的集団性」と呼んでいる。 このスカの組織化パターンのために、バリの村落社会構造に、極めて集合的でありながらも奇妙なまでに複雑で柔軟なパターンが生まれている。バリの人々が何かをする場合、それがひどく単純な作業であっても、集団を作る。実際のところ、この集団には、マーガレット・ミードとグレゴリー・ベイトソンが指摘したように、ほとんど常に技術的に必要な数を遥かに上回る人員が集まる。混雑し、賑わい、いくぶん乱雑であわただしい社会環境の創出は、……最も基礎的な仕事でさえ、その遂行のために必要であるように思われる。重要な社会的活動へのアリにも似た取り組み方(バリ人自身は苦笑いを浮かべながらこのことをベベック・ベベカン〔「アヒルのよう」〕と表現する)は、……いかなる集団にも1つの目的に向かう傾向がみられ……、逆説的にも、多元的集団性とでも呼びうるものに導く。 このように、人々はバンジャールなどの地域組織に属することで小さいころから隣人との助け合いの心を身につけており、喧嘩を好まない。このような背景もあって、住民の性格は非常に温厚である。
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