地位継承
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/17 07:48 UTC 版)
オクタウィアヌスが獲得した職権は、既存の職権をそれぞれ別個に獲得したものであり、これらをひとまとめの職務として継承する法律や仕組みは考案されなかった。オクタウィアヌスは、後継者候補(アグリッパやティベリウス、ガイウス・カエサルなど)が執政官職や護民官職に就任したり、プロコンスル命令権を得て属州に派遣されるように計らったが、彼等が職位についたのは従来の公職者選定の仕組みを通じてである。皇位継承法の不在は後世まで引き継がれ、皇位継承時度々騒乱が起こる原因となった。しかし、軍事力による帝権獲得以外では、誰でも候補になれたわけではなく、後継者候補は皇帝家と縁戚である者に限られた。縁戚でない者が皇帝候補となる場合には皇帝家と縁組することが求められた。ウェスパシアヌスは皇帝家と縁戚を持たないまま軍事力によって、実態はばらばらの職務の集積である皇帝権を獲得したため、彼の職権を明確にするための法律を定めた。この法律でウェスパシアヌスは「インペラトル」と自称し、その職務と職権が定義されたと見なされている。しかしそれでも継承候補者は皇帝権を構成する執政官やプロコンスル命令権、護民官職権を別々に与えられる状態は続き、元首政時代は、これら職務の未経験者が皇帝に就任した場合でも、即位時に「プロコンスル命令権、護民官権、元老院への提案権の授与」がなされる慣行が続いた。ディオクレティアヌス帝の四分統治以降は、現役の皇帝が在位中に後継者を共治帝として分割統治・あるいは共同統治する形態がとられるようになり、皇帝家と関係がない者が候補者となる場合は皇帝家との縁組がなされた。
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