四重星以上の恒星系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/08/11 03:42 UTC 版)
3個以上の階層的な多重星系は、Evans (1968)が「モビール・ダイヤグラム」(mobile diagram)と呼ぶ図で示されるような、より複雑な配列となる。これらは、天井から吊す飾りのモビールと似た形になるため、このように呼ばれ、いくつかの例を左に示している。ダイヤグラムのそれぞれの段は、2つかそれ以上のより小さな系への分解点を示している。Evansはダイヤグラムのそれぞれの段を「階層」(hierarchy)と呼んだ。 (b)のような1段階の単一階層のダイヤグラムは、二重星を表している。(c)のような2段階の単一階層のダイヤグラムは、三重星、(d)のような3段階の単一階層のダイヤグラムは、四重星を表している。3段階のダイヤグラムは、4個から8個の成分を持つ。(e)のダイヤグラムは、近接連星の周りを1つの恒星が公転しており、さらに近接連星を構成する1つの恒星がさらに近接連星となっているような四重星系の例を表している。 3階層を持つ実際の恒星の例は、ふたご座のカストルである。実視連星のそれぞれを詳しく見ると2つずつの分光連星に分けられる。これだけで(d)の2階層の四重星系になるが、さらに遠くに、2つの赤色矮星からなる暗い連星の伴星が周りを回っており、結果として3階層の六重星系となっている。 1999年に発行された A. A. TokovininのMultiple Star Catalogueによると、最多の階層は4階層である。例えば、グリーゼ644Aとグリーゼ644Bは実視連星であるように見えるが、実はグリーゼ644Bは分光連星であり、実際は三重星系である。この三重星系は遠い軌道に伴星グリーゼ643を伴い、さらに遠くにグリーゼ644Cも存在する。グリーゼ644Cは、グリーゼ644A及びBと共通の運動をするため、重力的に結びついていると考えられている。この五重星系は、(f)で示されるような4階層のモビール・ダイヤグラムを持つ。 さらに高次の階層も考え得る。これらの高次の階層の多くは安定であるか、または内部に摂動を持つものもある。また、高次の多重星系は理論的にはそのうち小さな多重星系に分解し、多く観測される三重星系や四重星系に落ち着くと考える研究者もいる。
※この「四重星以上の恒星系」の解説は、「多重星」の解説の一部です。
「四重星以上の恒星系」を含む「多重星」の記事については、「多重星」の概要を参照ください。
- 四重星以上の恒星系のページへのリンク