呼吸鎖電子伝達系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/01 13:57 UTC 版)
呼吸鎖電子伝達系では、解糖系やTCA回路にて生産されたNADHやFADH2等を用いてプロトン濃度勾配の形成を行なうが、その時に流れる電子は以下のように伝達が行われる。 NADH/NAD+(E’0 = -0.32V) → 呼吸鎖複合体I(E’0 = -0.12V) 呼吸鎖複合体I → シトクロムb(E'0 = -0.07V) シトクロムb → シトクロムc1(E'0 = 0.22V) シトクロムc1 → シトクロムc(E'0 = 0.25V) シトクロムc → シトクロムa(E'0 = 0.29V) シトクロムa → 酸素(E'0 = 0.82V) このそれぞれの反応の酸化還元電位差(⊿E'0)および生成自由エネルギー(⊿G0')は以下の通りである。 ⊿E'0 = 0.2V、⊿G0'= -39kJ/mol ⊿E'0 = 0.05V ⊿E'0 = 0.29V ⊿G0' = -55.9kJ/mol ⊿E'0 = 0.03V ⊿E'0 = 0.04V ⊿E'0 = 0.53V ⊿G0' = -101.7kJ/mol 1、3、6の反応にて発生する生成自由エネルギーがプロトン濃度勾配形成に関与する。 なお、上記の反応がNADHの酸化還元反応だが、呼吸鎖複合体IIの関与するコハク酸呼吸の場合、FAD/FADH2の酸化還元電位はE'0 = -0.219Vのため、複合体Iの関与する経路からは電子伝達は行われない。これは複合体IのNADH脱水素部位であるフラビン(FMN)が同じ酸化還元電位を有するからである。しかしながら以下の経路にて電子伝達が行われている。 FAD/FADH2(E’0 = -0.219V) → ユビキノン/ユビキノール(E’0 = 0.10V) ユビキノール → シトクロムc1(E'0 = 0.22V) シトクロムc1以降の経路は上記の呼吸鎖電子伝達系と同じ。したがって、FADH2由来の電子伝達はNADHに比べて効率が悪く、一分子あたりのプロトン輸送数がNADHよりも少ない。 なお、上記の呼吸鎖電子伝達系は主なものをピックアップしたのみであり、実際は呼吸鎖複合体のタンパク内に配位されている鉄・硫黄クラスター、シトクロム、キノンサイクル機構、銅原子などを経て酸素に伝達される複雑な経路である。しかしながらその伝達経路は必ず酸化還元電位の低い分子から高い分子に伝達されると言う大原則に基づいている。
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