名古屋安楽死事件とは? わかりやすく解説

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名古屋安楽死事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/14 16:38 UTC 版)

名古屋安楽死事件(なごやあんらくしじけん)は安楽死に関する事件[1]

概要

愛知県中島郡祖父江町で農家の男性X(当時24歳)が、全身不随の実父(当時52歳)が余命1週間と医師に宣告された段階で、本人の死にたいという希望を受け、1961年8月26日に牛乳に農薬を混入し殺害した事案である。

Xは尊属殺人罪で起訴され、1962年7月4日名古屋地裁一宮支部でXに懲役3年6ヵ月の有罪判決が言い渡された。

Xは控訴し、1962年12月22日名古屋高裁は安楽死について以下の6条件を挙げ、6条件に全部当てはまる場合は安楽死は認められて、刑事責任が棄却されるとした[2]

  1. 病者が現代医学の知識と技術からみて不治の病に冒され、しかもその死が目前に迫つていること
  2. 病者の苦痛が甚しく、何人も真にこれを見るに忍びない程度のものなること
  3. もつぱら病者の死苦の緩和の目的でなされたこと
  4. 病者の意識がなお明瞭であつて意思を表明できる場合には、本人の真摯な嘱託又は承諾のあること
  5. 医師の手によることを本則とし、これにより得ない場合には医師によりえないと首肯するに足る特別な事情があること
  6. その方法が倫理的にも妥当なものとして認容しうるものなること

そして、この事件は5と6の条件が欠いているとした上で、尊属殺人罪で有罪とした一審判決を破棄して、嘱託殺人罪で懲役1年執行猶予3年の有罪判決を維持した[2]

日本の裁判所が安楽死を認める見解を公表したのは初めてであった[3]

脚注

  1. ^ 佐藤泰子 (2021), p. 26.
  2. ^ a b 「安楽死 条件整えば認める 名古屋高裁 画期的な見解」『朝日新聞朝日新聞社、1962年12月23日。
  3. ^ 「六つの条件をみたせば“安楽死”みとめる 名古屋高裁 小林裁判長」『読売新聞読売新聞社、1962年12月23日。

参考文献

関連項目


名古屋安楽死事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/10 01:33 UTC 版)

東海大学安楽死事件」の記事における「名古屋安楽死事件」の解説

本件先立つ安楽死事件リーディング・ケースが「名古屋安楽死事件」である。これは被告人重病の父の苦痛を見かね、母が父に飲ませる牛乳毒薬混入して安楽死させた事案である。名古屋高等裁判所昭和37年12月22日判決は、安楽死要件違法性阻却事由)として、次の6つ示した不治の病冒され死期目前迫っていること 苦痛見るに忍びない程度甚だしいこと 専ら死苦緩和目的なされたこと 病者意識がなお明瞭であって意思表明できる場合には、本人真摯な嘱託又は承諾のあること 原則として医師の手によるべきだが医師により得ない首肯するに足る特別の事情認められること 方法倫理的にも妥当なものであること なお本件では5と6の要件満たさない違法性阻却されない)として、嘱託殺人罪の成立認めた。 なお、事案日ごろ安楽死について意思表明していなかった患者が、病床苦痛によって「殺してくれ」「早く楽にしてくれ」と叫んでいたというものであり、平時死を望んでいた事情がないからといって真摯な意思表明でないとはいえいとしている。ゆえに、4の要件意思表明確認できない場合危篤時など)にどう位置づけるべきかは、以後裁判例委ねられた。

※この「名古屋安楽死事件」の解説は、「東海大学安楽死事件」の解説の一部です。
「名古屋安楽死事件」を含む「東海大学安楽死事件」の記事については、「東海大学安楽死事件」の概要を参照ください。

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