取消しの意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/05 16:37 UTC 版)
取消しの対象となるのは民法で取り消すことができるものと定められた法律行為に限られ、事実行為(放任行為)や、不法行為は取り消すことができない。民法の規定には法律行為の取消しについて定めたものも多いが、それぞれの取消し制度が意図する保護の対象によって取り消すことのできる行為の範囲や取消権者の範囲などの要件が異なる。 民法120条以下に定められる「取消し」は制限行為能力者や瑕疵ある意思表示をした者の取引の安全を保護するための制度である。「取り消すことのできる行為(取消しうべき行為ともいう)」は、取消権行使までは有効であるが、取消権が行使されると、行為時に遡って無効と同様に扱われる。取り消すことのできる行為の相手方は、いつ取り消されるか分からない非常に不安定な状態に置かれるため、民法は、このような状態を脱する手段として、同意、追認、法定追認、短期消滅時効等の規定を用意し、相手方の保護を図っている。 先述のように民法120条以下の適用を受ける取消しは、二つの種類に分けられる。 制限行為能力者のした法律行為の取消し 瑕疵ある意思表示の取消し 両者は、「取消権者」と「相手方保護」及び「取消しの効果」に違いがある。制限行為能力者のした意思表示の取消しは、瑕疵ある意思表示の取消しより更に保護を厚くしたものといえる。 制限行為能力者の場合は事理弁識能力が低いほど取消しの対象となる行為は広範であるが、ノーマライゼーションの観点から日常行為については単独で可能としたため、取消し不可となっている。また、瑕疵ある意思表示に関しては、帰責性の低い強迫による意思表示の取消しの方が、詐欺による意思表示の取消しよりも取り消すことができる範囲が広範である。 以下では民法120条以下の適用を受ける一般的取消しを中心に解説する。
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