原腸が形成されない場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/08 15:00 UTC 版)
原腸がはっきりと形成されない例もある。刺胞動物の一部では、卵割を通じてその内側に空洞が生じない例があり、これを中実胞胚という。それが内外の細胞に分かれる形で複数層の細胞層を持つに至ると、内部に原腸の構造を持たないものができあがる。後にその内部の細胞分裂によって、改めて原腸が形成される。 元来は原腸が存在したのであろうが、変形によって見えなくなったとおぼしき例もある。脊椎動物の羊膜類がそれである。 鳥類の場合、非常に卵黄が多いため、その卵割は動物極側のごく一部でのみ行われる、いわゆる盤割であり、卵黄の上に円盤状の細胞群が乗った形で発達する。原腸の陥入はその円盤の一端から周囲の細胞群が表面の細胞層の下に潜り込む形で行われる。この時、侵入した細胞層は平面的で、袋の形を取らない。この部分は中胚葉となり、この細胞層の下、卵黄の表面に散在する細胞群が内胚葉となる。 ほ乳類ではさらにここから変化した形が見られる。卵は卵割が進むと中空となり、これを胞胚と言うが、実際にその後の発生で外胚葉となるのはその内側の片方に集まった細胞層である。この部分から内部の空洞の中で細胞の移動が生じてここに新たに内部に空洞を持つ細胞層が作られると、これが内胚葉となる。これは鳥類の卵黄嚢にあたり、卵黄がなくなったために変形した形である。原腸は区別できない。ほ乳類の発生は脊椎動物の発生の基本形から極端に変わっており、比較が難しい。これはは虫類段階での胚膜の形成と卵嚢の増加による変形を経て、さらに胎生になったことで卵黄が激減すると同時に胚膜の形成が前倒しされたことが大きな原因になっている。
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