単連結空間上の保存力場の性質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 06:33 UTC 版)
「ケルビン・ストークスの定理」の記事における「単連結空間上の保存力場の性質」の解説
上記の意味のヘルムホルツの定理は、以下の問題に指針を与える。 何故、(単連結空間では)保存力場に逆らった物体の移動に伴う仕事は、経路に依存しないのか? 手始めに、以下の Lemma 2-2を考える。 Lemma 2-2. U ⊆ R3を開集合とし,Fを、U上で定義された層状ベクトル場、c0 : [0, 1] → Uを区分的に滑らかなループ曲線p ∈ Uを固定点とする。 このとき、以下を充たすようなホモトピー(tube-like-homotopy) H : [0, 1] × [0, 1] → U が存在したとすると、 [SC0] H は区分的滑らか, [SC1] H(t, 0) = c0(t) for all t ∈ [0, 1], [SC2] H(t, 1) = p for all t ∈ [0, 1], [SC3] H(0, s) = H(1, s) = p for all s ∈ [0, 1]. 以下が成り立つ。 ∫ c 0 F d c 0 = 0 {\displaystyle \int _{c_{0}}\mathbf {F} dc_{0}=0} Lemma 2-2は、Theorem 2-1の特殊な場合にすぎない。Lemma 2-2の[SC0] to [SC3] は、非常に重要である。任意のループと、任意の固定点との間に、区分的に滑らかなループ曲線が取れる(即ち、[SC0] to [SC3]をみたすHがとれる) ような連結空間のことを、単連結空間という。正確な定義は以下の通り。 Definition 2-2 (単連結空間). M ⊆ Rnを、連結空間 とする。M が単連結であるとは、任意の連続なループc : [0, 1] → Mに対し、以下を充たすようなH : [0, 1] × [0, 1] → M が取れる。 [SC0'] H は”連続”写像である。 [SC1] H(t, 0) = c(t) for all t ∈ [0, 1], [SC2] H(t, 1) = p for all t ∈ [0, 1], [SC3] H(0, s) = H(1, s) = p for all s ∈ [0, 1]. なお、本によっては、単連結性の定義に、さらに、「[SC4]固定点pが、ループ上にある」という条件をさらに課している場合もあるがこの条件は、(基本群を使った考察をするうえで便利だが)あってもなくてもよい。すなわち、以下の命題が同値であることは容易に想到できよう。 Uが[SC1]-[SC3]のすべてを充たす。 Uが[SC1]-[SC4] のすべてを充たす。 さて、賢明な者は、[SC0]と[SC0’]の違いについて気付き、以下の2命題の間に、非常に大きなギャップがあることに気付くであろう。 任意の連続なループと、任意の1点の間に連続なホモトピー(tube-like-homotopy)が存在する。 任意の区分的滑らかなループと、任意の1点の間に区分的滑らかなホモトピー(tube-like-homotopy)が存在する。 しかし上記の2命題の間のギャップはとてつもなく大きく、これを埋めるには微分トポロジーに関する高度な知識が必要となる。しかし、事実として、ある程度素性の良い空間においては、この2つの命題は等価である。このギャップが気になるものは、例えば以下のリソースを参照するとよい。 Whitney Approximation Theorem ( page 136あるいは、) (及び、その適用法 page 421). より一般的な問題としては、ポントリャーギン (see Theorems 7 and 8)を参照のこと。 Lemma 2-2と、上記の事実から、以下の定理が導出される。 Theorem 2-2. 開集合U ⊆ R3は、単連結とする。定義域をUとする層状ベクトル場Fと、区分的に滑らかな曲線c : [0, 1] → U に対し、以下が成り立つ。 ∫ c 0 F d c 0 = 0 {\displaystyle \int _{c_{0}}\mathbf {F} dc_{0}=0} この定理より、 単連結空間では保存力場に逆らった物体の移動に伴う仕事は、経路に依存しないことが保障される。
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