化学式とは? わかりやすく解説

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化学式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/03 08:20 UTC 版)

イソブタンの構造式
分子式: C
4
H
10

示性式: (CH
3
)
3
CH
バックミンスターフラーレンの三次元表現
従来の式:MC
60

@表記:M@C
60

@記号(アットマーク)は、ケージ内に閉じ込められているが、化学的に結合していない原子や分子を示す。たとえば、原子 M を持つバックミンスターフラーレン(C
60
)は、M が化学結合せずにフラーレン内に捕捉されているか、炭素原子の1つと結合してフラーレン外にあるかに関わらず、単純に MC
60
と表記される。@記号を使用すると、M が炭素ネットワークの内側にある場合は M@C
60
と表記される。フラーレン以外の例としては、 [As@Ni
12
As
20
]3− があげられる。このイオンは、1個のヒ素原子(As)が、他の32個の原子によって形成されたケージ内に閉じ込められている。

この表記法は、1991年に提案されたもので[3]Laなどの原子を閉じ込めて La@C
60
や La@C
82
を形成するフラーレンケージ(内包フラーレン)が発見されたことに伴うものである。この記号を選んだ理由について著者らは、印刷や電子送信が容易であること[注釈 2]、視覚的に内包フラーレンの構造を示唆するものであると説明している。

不定比化学式

化学式では通常、各元素の数を整数で表記する。しかし、小さな整数では表せない不定比化合物(または非化学量論的化合物)と呼ばれる種類の化合物が存在する。このような式は、Fe
0.95
O のように小数で表されることもあれば、Fe
1-x
O のように文字による可変部を含むこともある。

有機化合物の一般式

一定の単位で互いに異なる一連の化合物を表す化学式を、一般式(general formula)と呼ぶ。これは、同族列英語版の化学式を生成する。たとえば、アルコールは C
n
H
2n + 1
OH (n ≥ 1) という一般式で表すことができ、1 ≤ n ≤ 3 でメタノールエタノールプロパノールという同族体を得ることができる。

また、任意の金属元素を示す M やハロゲン元素を示す X など、元素記号を一般化して表すこともある。

ヒルシステム

ヒルシステム(Hill system、またはヒル表記法(Hill notation))は、実験式、分子化学式、示性式の構成元素の表記方法であり、分子内の炭素原子の数を最初に表し、次に水素原子の数を表し、その後に他のすべての化学元素の数を元素記号アルファベット順に記述する。炭素が式に含まれない場合は、水素を含むすべての元素をアルファベット順に列挙する。

このような規則に従って化学式を各元素の原子数によって並べ替え、前の元素や数値の違いは後の元素や数値の違いよりも重要なものとして扱うことで、テキスト文字列を辞書順に並べるのと同様に、化学式をヒルシステム順序(Hill system order)と呼ばれるものに対照 (en:英語版することができる。

ヒルシステムは、1900年に、米国特許商標庁の Edwin A. Hill が発表したものである[4]。これは、化学データベースや印刷された索引で化合物のリストを分類するために、最もよく使われる方式である[5]

ヒルシステム順序による式の一覧では、上記のようにアルファベット順に配列され、記号が同じ文字で始まる場合は、1文字の元素が2文字の元素よりも前に来るようになっている(つまり「B」は「Be」の前に、「Be」は「Br」の前に来る[5])。

次に例を示す式の配列はヒルシステムを使用して書かれ、ヒルシステム順序に並んでいる。

  • BrI
  • BrClH2Si
  • CCl4
  • CH3I
  • C2H5Br
  • H2O4S

関連項目

  • 有機化合物の一覧
  • 式単位英語版 - イオン性または共有結合性ネットワークの固体化合物の実験式
  • 同位体記法英語版 - 同位体や核種を指定する表記法
  • 周期表 - 化学元素をその性質に基づいて行列に並べたもの
  • 骨格式 - 分子の骨格構造を二次元で表現した表記法
  • SMILES記法 - 化学種の構造を短いASCII文字列で記述するための線型表記法
  • 分子量 - ある分子の質量
  • 立体化学 - 分子の構造を形成する原子の相対的な空間配置や操作に関する研究

脚注

注記

  1. ^ 示性分子式(condensed molecular formula)や半構造式(semi-structural formula)とも呼ばれることもある
  2. ^ @記号は、現代使われている大半の文字符号化方式の基礎をなすASCIIに含まれている

出典

  1. ^ Law of Constant Composition”. Everything Math and Science. SIYAVULA. 2016年3月31日閲覧。 This material is available under a Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0 license.
  2. ^ Burrows, Andrew. (2013-03-21). Chemistry³ : introducing inorganic, organic and physical chemistry (Second ed.). Oxford. ISBN 978-0-19-969185-2. OCLC 818450212 
  3. ^ Chai, Yan; Guo, Ting; Jin, Changming; Haufler, Robert E.; Chibante, L. P. Felipe; Fure, Jan; Wang, Lihong; Alford, J. Michael et al. (1991). “Fullerenes wlth Metals Inside”. Journal of Physical Chemistry 95 (20): 7564–7568. doi:10.1021/j100173a002. 
  4. ^ Edwin A. Hill (1900). “On a system of indexing chemical literature; Adopted by the Classification Division of the U.S. Patent Office”. J. Am. Chem. Soc. 22 (8): 478–494. doi:10.1021/ja02046a005. hdl:2027/uiug.30112063986233. https://zenodo.org/record/1428916. 
  5. ^ a b Wiggins, Gary. (1991). Chemical Information Sources. New York: McGraw Hill. p. 120.

参考文献

外部リンク

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