加藤景正とは? わかりやすく解説

かとう‐かげまさ【加藤景正】


加藤景正

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/12 01:57 UTC 版)

加藤 景正(かとう かげまさ、仁安3年(1168年)? - 建長元年3月19日1249年5月3日)?[注 1])は、鎌倉時代前期の陶工で、愛知県瀬戸市域を中心とする瀬戸焼(瀬戸窯)の開祖(愛知県瀬戸市、岐阜県東美濃地方=東濃地方)では陶祖とされる。

概要

通称は四郎左衛門(しろうざえもん)。これを略して藤四郎(とうしろう)とも呼ばれた。号は春慶(しゅんけい)。加藤景廉の弟と伝わるが、その実像については不明な点が多い。現代の瀬戸、美濃界隈では陶工の本家の陶祖として語り継がれている伝説的人物。

一般的な説では、貞応2年(1223年)に道元とともに南宋に渡り、5年後の嘉禄3年(1228年)に帰国の後、全国を放浪した後に尾張国の瀬戸で陶器に適した土を見つけて、13世紀中ごろの仁治3年(1242年)頃、窯を開いたとされている。一方で寛文12年(1672年)の『茶器弁玉集』には道元との入宋以前から瀬戸で窯業を営んでいたとの記述もあるという[1]。子の加藤基通も藤四郎を名乗ってその家は12代にわたって続いたとされ、現在も愛知県瀬戸市には深川神社の境内社として景正を祀った「陶彦神社」が存在する。

その一方で、瀬戸で茶入が焼かれたのは室町時代であるとされ、景正の作品とされるものでも制作年代に疑問を持たれているものもある。また窯跡発掘調査に基づく考古学の研究成果では、施釉技法を持つ瀬戸窯が成立したのは平安時代中期(10世紀末)の灰釉陶器[注 2]からであり、景正の開祖伝説の年代とはまったく一致しないことが明らかとなっている[1]

ただし、瀬戸で無釉の山茶碗窯の時期(11世紀末~12世紀代)を経て、再び釉薬を用いた陶器製造が復活(古瀬戸様式)したのは鎌倉時代前期の12世紀末であることが発掘調査により判明しており、かつ「道元との入宋以前から景正が製陶を営んでいた」などの先述の伝承などを勘案すると、陶祖が存在した時期と古瀬戸様式の成立時期は概ね近しくなるため、景正あるいはそのモデルとなった人物が、山田郡(現・瀬戸市)に窯を定め、製陶法を瀬戸界隈に伝え、瀬戸焼(古瀬戸様式)の基礎を構築した可能性も否定はできないともされている[2]

景正の遺徳を偲ぶ祭りとしては、1962年に「せと陶祖(陶器)まつり」が愛知県瀬戸市にて始まり、毎年4月下旬ごろ開催されている。現在瀬戸、美濃では陶祖と言われると加藤景正の事をさすが、景正の子孫並びに末裔が美濃国(岐阜県多治見市、土岐市、可児市界隈の笠原、市之倉、定林寺、下石、妻木、肥田、駄知、久尻、高田地区など)に移り住み、景正の末裔がそれぞれの村(現在は町単位)での陶祖とされ現在に至っている。

明治38年(1905年)、正五位を追贈された[3]

関連項目

  • 深川神社 重要文化財の陶製狛犬は、社伝では瀬戸並びに美濃の陶祖加藤景正(四郎左衛門、藤四郎)の作という。
  • 窯神神社 愛知県瀬戸市にある神社。瀬戸焼において「磁祖」と呼ばれる加藤民吉を祀る。
  • 古瀬戸様式

脚注

注釈
  1. ^ 元暦元年(1184年) - 文暦元年(1234年)とする異説のほか様々な説がある。
  2. ^ 猿投窯の拡大により瀬戸市域に出現した幡山地区の窯跡群で、広久手30号窯跡を最古とする。
出典
  1. ^ a b 藤澤(2005)、P.11
  2. ^ 藤澤(2005)、P.12
  3. ^ 田尻佐 編『贈位諸賢伝 増補版 上』(近藤出版社、1975年)特旨贈位年表 p.21

参考文献


加藤景正

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 22:16 UTC 版)

加藤氏」の記事における「加藤景正」の解説

加藤景廉の兄ともいう瀬戸焼の祖。

※この「加藤景正」の解説は、「加藤氏」の解説の一部です。
「加藤景正」を含む「加藤氏」の記事については、「加藤氏」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「加藤景正」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



加藤景正と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「加藤景正」の関連用語

1
100% |||||

2
加藤四郎左衛門景正 デジタル大辞泉
100% |||||

3
春慶手 デジタル大辞泉
100% |||||

4
春慶 デジタル大辞泉
94% |||||

5
春慶焼 デジタル大辞泉
94% |||||

6
古瀬戸 デジタル大辞泉
74% |||||


8
加藤 デジタル大辞泉
36% |||||

9
瀬戸焼 デジタル大辞泉
36% |||||


加藤景正のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



加藤景正のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの加藤景正 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの加藤氏 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS