れっしゃ‐ていこう〔‐テイカウ〕【列車抵抗】
列車抵抗
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/31 23:46 UTC 版)
列車抵抗(れっしゃていこう)は、鉄道の列車を運転する際に、その進行に対する抵抗[1]のことである。空気抵抗や車輪の転がり抵抗など、いくつかの要因による抵抗力を全て合計したものが列車抵抗である。
列車抵抗の要素
列車抵抗は、いくつかの要素で構成されている。以下に要素を示す。
- 出発抵抗
- 走行抵抗
- 勾配抵抗
- 曲線抵抗
- トンネル抵抗
大きく、列車を加速させるために物理的に必要なもの(出発抵抗・走行抵抗)、設備に起因するもの(勾配抵抗・曲線抵抗・トンネル抵抗)に分類される。また加速するためには車輪や電動機の回転部分なども速く回転させなければならないが、これは列車全体としての直進運動の加速とは別に回転運動を加速させなければならず、これにも抵抗がある。この力のことを加速抵抗・加速度抵抗・慣性係数などと呼ぶことがある。
列車抵抗は、実際の車両において働く力をニュートン単位で測定することもあるが、多くの場合は列車重量1 トンあたりの力 (N/t) で表す。以下ではこの列車重量1トンあたりの列車抵抗を説明している。
出発抵抗
出発抵抗は、列車が出発して動き出すときに働いている抵抗で、車軸と軸受の摩擦に起因している。起動抵抗と呼ぶこともある。動き出す瞬間が一番大きく、速度が上がると急速に小さくなることから、通常は0 km/hの時の値と3 km/hの時の値を直線で結んで表現し、それ以降は走行抵抗とみなす。出発抵抗は、列車の重量1 tあたりの力(単位N)で表現する。
出発抵抗は、軸受の種類と停車時間により影響される。ころ軸受の車両では30 N/tほど、平軸受の車両では80 - 100 N/tほどである。
走行抵抗
走行抵抗は、列車が走行しているときに列車に発生する抵抗で、空気抵抗や車輪・車軸の摩擦などが原因となっている。走行抵抗はさらに車両抵抗と空気抵抗に分けて考える。
車両抵抗
車両抵抗は、車両が走行することによる機械的な抵抗である。車両抵抗はさらに細かく分解すると、車輪とレールの間の摩擦抵抗(主にフランジがこすれることによる)・車軸と軸受の摩擦抵抗・電動機などの原動機に関わる回転抵抗・その他の摺動部分の抵抗などがある。車軸と軸受の抵抗は、軸受に掛かる圧力が大きくなるほど単位重量あたりでは減少する。また潤滑油の粘度は温度が高いほど低いことから、一般に冬になると車両抵抗が増加する。
空気抵抗
空気抵抗は、列車が走行することにより列車先頭部が空気を押しのけたり、列車側面と空気の摩擦で抵抗を受けたりすることによって発生する。おおむね速度の2乗に比例して大きくなる。中間車両に比べると、先頭車両の空気抵抗の大きさは約10倍ほどになる。また、末尾の車両でも列車が進行すると、末尾側で空気が薄くなって車両を引っ張るので、中間車両に比べて抵抗が大きくなり、約2.5倍ほどになる。したがって、編成の構成両数が長くなるほど単位重量あたりの空気抵抗は減少する。また、車両の外部形状や材質のみが影響するので、無蓋車を除き、中に旅客や貨物がどれだけ搭載されていても空気抵抗には影響を与えない。つまり、空気抵抗に重量は影響しない。
なお、トンネル内では空気抵抗自体が顕著に増加するが、これはトンネル抵抗の節で説明する。
走行抵抗の表現式
走行抵抗は理論的に解析することは困難な値であるため、車両の形式ごとに実測値を元にこれを表す式を作って利用する。一般式は、
- 電気鉄道ハンドブック編集委員会 編『電気鉄道ハンドブック』コロナ社、2007年。ISBN 978-4-339-00787-9。 pp.391 - 393
- 鉄道車両の走行抵抗調査分科会 「鉄道車両の走行抵抗」 日本機械学会誌 Vol.67 No.543(1964年4月) pp.620 - 630
関連項目
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