免責理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/25 19:08 UTC 版)
このような名目的取締役の第三者に対する責任を否定する判決で考慮された事情は、以下のように大別できる。ただし、こうした理由で名目的取締役の責任を否定する裁判例に対し、学説上は批判も多い。 取締役としての職務を期待されていないこと取締役としての職務を免除する合意があること 実質的に社長の個人営業であること 取締役会が開催されていないこと 出資をしていないことや報酬を受け取っていないこと これらは当該取締役が名目的取締役であったことを示す事情であるが、「会社との間で合意があっても、会社法が定める役員の責任は強行法規であり、こうした合意は無効である」、「取締役としての職務に熱心な者ほど責任を負わされ、怠慢であればあるほど責任を負わなくてすむ」、「取締役会の不開催を助長する」、「報酬を受けていないことは責任の有無と関係ない」などの批判がある。 取締役としての職務を行おうとしても困難であること他の仕事と兼業していること 遠隔地に居住していること 専門知識がないこと 病気や老齢であること これらは任務懈怠があっても悪意・重過失があったとはいえないとする事情であり、こうした事情がある場合、ある程度職務を行っていれば重過失とはいえないとする学説もあるものの、「重過失の有無は通常の取締役がわずかな注意で防止できたかを基準とすべき」、「何もしなかったことをもって任務懈怠に重過失がなかったとは言えない」、「そもそも取締役としての職責を果たせない者は取締役になるべきではない」とする批判もある。 不正行為を阻止することが困難であること事実上の影響力がないこと これは任務懈怠と第三者の損害の相当因果関係を否定する事情であるが、「ワンマン経営者であり忠告しても聞き入れられなかったであろうなどというのは、監視義務が必要な時ほど監視義務を免除することになる」、「事実上の影響力がある取締役にのみ責任を負わすことは、取り締まらない取締役の存在を肯定することである」、「阻止できたかどうかはやってみなければわからない」などとする批判も強い。 このほか、取締役としての在任期間の長短を理由にした判決もあるが、在任期間が短いことを理由に責任を否定した判決がある一方で、5年や10年経過していることを理由に責任を否定したものもある。
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