元素合成と同位体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/30 15:00 UTC 版)
詳細は「イットリウムの同位体」を参照 太陽系のイットリウムは恒星内元素合成に由来し、約72%がs過程、約28%がr過程によるものである。s過程は数千年かけてゆっくりと進み、脈動する赤色巨星の内部で起こる。r過程は超新星爆発に伴って起こる速い反応である。いずれも軽い原子核の中性子捕獲により質量数が増加する。 イットリウムはウラン核分裂反応の主要な生成物である。核廃棄物管理の観点で重要な同位体は、半減期58.51日の91Yと半減期64時間の90Yである。90Yは短い半減期を持ちながら、親核種のストロンチウム90 (90Sr) の半減期が29年と長いため永続平衡(英語版)状態になる。 第3族元素の陽子の数は奇数なので安定同位体が少ない。イットリウムの安定同位体は89Yのみであり、これは天然に存在する。ほかの過程で生成した同位体が電子放出(中性子 → 陽子)で崩壊するための十分な時間をs過程が与えることにより、89Yの存在量が多くなったと考えられている。s過程では質量数(A = 陽子 + 中性子)が90、138、208付近の原子核が選択的に生成する傾向がある。このとき中性子数はそれぞれ50、82、126となる。このような同位体は電子をあまり放出しないので、結果として存在量が多くなる。89Yの質量数は90に近く、中性子数は50である。 質量数76から108まで、少なくとも32種のイットリウムの人工放射性同位体が確認されている。最も不安定な同位体は半減期150 nsの106Yであり、その次は半減期200 nsの76Yである。最も安定なものは半減期106.626日の88Yであり、その次は半減期58.51日の91Y、79.8時間の87Y、64時間の90Yである。ほかの同位体の半減期はすべて1日以内であり、そのほとんどが1時間以内である。 質量数88以下のイットリウム同位体は、主にβ+崩壊(陽子 → 中性子)によりストロンチウム (Z = 38) の同位体になる。質量数90以上のものは、主にβ−崩壊(中性子 → 陽子)によりジルコニウム (Z = 40) の同位体になる。また、質量数97以上のものはβ遅延中性子放出過程による崩壊が一部起こる。 質量数78から102まで、少なくとも20種の準安定同位体(励起状態の同位体)が知られている。80Yと97Yでは複数の励起状態が確認されている。基底状態より励起状態のほうが不安定なはずだが、78mY、84mY、85mY、96mY、98m1Y、100mY、102mYは基底状態のものより長い半減期を持つ。その理由は、これらは核異性体転移だけでなくβ崩壊によっても崩壊するためである。
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