偏角を利用した方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 02:42 UTC 版)
方位磁針などの磁石はN極が北を向いて止まるといわれているが、実際には、磁石が指し示す北は、一般的には地理上の北極点の向きと一致しない。この両者のずれが磁気偏角である(偏差、または偏角とも呼ばれる)。偏角の大きさは測定する場所によって異なる。 この偏角が経度に応じて変化するという説にもとづいて、偏角を求めることで経度を測定するという方法が存在した。 たとえばジョアン・デ・リスボアは1514年に書かれた手記で、アゾレス諸島のサンタマリア島は偏角がゼロ(磁石のN極の向きと北極点の向きが一致する)の地点であり、そこから東西に離れるに従って偏角は増し、90度離れた地点で最大偏角45度に達すると記した。そのため、偏角を測定すればその場所の経度が求められると主張した。また、ルイ・ファレイロは1535年に印刷された論文で、同じような理論を展開した(ただしファレイロは、最大の偏角は90度と述べている)。 偏角を使った方法は天体観測に頼らずに経度を測定できるため、一部で期待されていたが、偏角に関するデータが少なく実用化には結びつかずにいた。 ポルトガルの貴族ジョン・デ・カストロは、1538年から1541年までのあいだに3回の航海を行い、その間に合計127回偏角を測定した。しかしカストロは偏角と経度との関係を見出すことができなかったため、偏角は経度差に比例しないと結論づけた。 しかしカストロの報告の後もこの方法は完全になくならず、17世紀初頭の段階でも賛否が分かれていた。しかし実際のところ、ウィリアム・ボーンが1574年に主張したように、等偏角線は経度に沿って直線状に伸びてゆくものではなく、複雑な曲線を描いている。また、エドモンド・ハレーが測定で導き出したように、地球の磁気は時間によっても異なるので、この方法で経度を求めることはできない。
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