修復内容
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/02/19 14:46 UTC 版)
「システィーナ礼拝堂壁画修復」の記事における「修復内容」の解説
修復チームは実作業に入る前に、六カ月の期間をかけてフレスコ壁画の事前調査を実施している。ヴァチカン美術館が1930年代に修復作業を手がけたときの修復担当者への質疑応答をはじめ、洗浄に使用する最適な溶剤の選定、修復技法の決定などさまざまな事柄が検討されていった。 修復実作業の第一段階は顔料層が乗っている厚さわずか 5 mm 程度の漆喰層へのポリ酢酸ビニル樹脂の注入による再固着だった。これは修復作業中に漆喰層が剥離してしまい、顔料層ごと破損することを防ぐためである。過去の修復で顔料層を固定するために使用され、画肌のひび割れの原因にもなっていた青銅のピンも取り除かれ、ピンの穴は埋め戻された。部分的に固着が弱まっていた顔料は、希釈したアクリル樹脂で確実に固定された。 画肌の洗浄作業にはさまざまな溶剤が使用された。蒸留水は煤の除去と水溶性の汚れを分解するために広い範囲で使用されている。過去の修復作業で塗り重ねされた顔料や描き足された顔料は、十分に時間をあけた複数回の工程でゲル状の溶剤を用いて除去され、最後は蒸留水で洗浄された。塩分による白化はジメチルホルムアミド溶剤で処理されている。そして、薄いアクリルポリマー溶剤で画肌を硬化、保全し、最終の洗浄作業を経て全工程が終了する。 修復加筆が必要な箇所には水性顔料が使用された。加筆されたのは独特な質感を生み出している縦方向の筆使いで描かれた箇所だった。遠くから鑑賞する分には目立たないが、修復後の鮮明になった状態で近くに寄れば明らかに認識できる状態だったのである。 過去の修復作業の状態を保管するために敢えて修復されなかった箇所もある。僅かではあるが、後世に塗り重ねられた顔料、付着したロウ、水分侵食防止の油などが残されている部分が存在する。
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