例:リーマン球面の複素接束
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 22:27 UTC 版)
「チャーン類」の記事における「例:リーマン球面の複素接束」の解説
CP1 をリーマン球面とすると、CP1 は 1-次元複素射影空間である。z をリーマン球面の正則な局所座標であると仮定する。a を複素数として、V = TCP1 を各々の点で a∂/∂z の形式を持つ複素接ベクトルのベクトル束とする。髪の毛の定理(英語版)(hairy ball theorem)の複素数のバージョン、つまり V はいかなる場所でもゼロとはならないような切断を持たないことを証明する。 このために次の事実を必要とする。自明ベクトル束の第一チャーン類はゼロである。 c 1 ( C P 1 × C ) = 0 {\displaystyle c_{1}({\mathbf {C} \mathbf {P} }^{1}\times {\mathbf {C} })=0} このことは自明ベクトル束は常に平坦接続を持つという事実によって示される。 従って、 c 1 ( V ) ≠ 0 {\displaystyle c_{1}(V)\not =0} を示すことにする。ケーラー計量を考える。 h = d z d z ¯ ( 1 + | z | 2 ) 2 {\displaystyle h={\frac {dzd{\bar {z}}}{(1+|z|^{2})^{2}}}} 曲率 2-形式が Ω = 2 d z ∧ d z ¯ ( 1 + | z | 2 ) 2 {\displaystyle \Omega ={\frac {2dz\wedge d{\bar {z}}}{(1+|z|^{2})^{2}}}} により与えられることを示すことができる。さらに第一チャーン類の定義により、 c 1 = [ i 2 π t r Ω ] {\displaystyle c_{1}=\left[{\frac {i}{2\pi }}\mathrm {tr} \ \Omega \right]} である。このコホモロジー類がゼロではないことを示す必要がある。このためには、リーマン球面上の積分を計算すればよい。極座標へ変換した後では、 ∫ c 1 d z ∧ d z ¯ = i π ∫ d z ∧ d z ¯ ( 1 + | z | 2 ) 2 = 2 {\displaystyle \int c_{1}dz\wedge d{\bar {z}}={\frac {i}{\pi }}\int {\frac {dz\wedge d{\bar {z}}}{(1+|z|^{2})^{2}}}=2} となる。ストークスの定理により、完全形式は積分すると 0 でなければならないので、コホモロジー類はゼロではあり得ない。 これで TCP1 が自明ベクトル束ではありえないことが証明された。
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