佐柳島沖海保ヘリ墜落事故とは? わかりやすく解説

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佐柳島沖海保ヘリ墜落事故

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/05 14:22 UTC 版)

佐柳島沖海保ヘリ墜落事故
同型機のベル412
出来事の概要
日付 2010年8月18日
現場 日本香川県多度津町佐柳島瀬戸内海
乗員数 5
負傷者数 0
死者数 5(全員)
生存者数 0
機種 ベル・ヘリコプター・テキストロンベル412EP型(回転翼航空機)
運用者 第六管区海上保安本部
機体記号 JA6796
出発地 広島航空基地
目的地 広島航空基地
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佐柳島沖海保ヘリ墜落事故(さなぎじまおきかいほへりついらくじこ)は、2010年平成22年)に香川県仲多度郡多度津町佐柳島沖に、第六管区海上保安本部(六管本部)所属のヘリコプターあきづる」が墜落した航空事故である[1][2][3]

事故機の経歴

事故機は2007年11月に鹿児島航空基地から広島航空基地へ配置換えになった。この時、機体の愛称が「るりかけす」から一般公募により安芸の国とを組み合わせて「あきづる」に2008年3月変更された。

事故の概要

事故機となった「あきづる」(機体記号:JA6796、所属記号:MH796)は、広島県三原市にある第六管区海上保安本部広島航空基地(広島空港)所属であった[4][5]。「あきづる」は8月18日13時47分に広島航空基地を離陸し、瀬戸内海のパトロール及びデモンストレーション飛行(後述)を行った後に帰還する予定であった[3][6]

「あきづる」は海上での油漏れや不審船舶などのパトロールの合間に、香川沖を航行していた司法修習生が乗船していた船舶に対しデモンストレーション飛行を実施していた[7]

「あきづる」は2度目のデモンストレーションまでの合間にパトロール業務をしていた。低空飛行をしていた15時10分ごろ、瀬戸内海に浮かぶ佐柳島と隣の小島(おしま)を結ぶ6000ボルト送電線(全長1179メートル、海面より最高地点105メートル)に機体が接触し、そのまま海面に激突し大破沈没した[3][8]。目撃証言によれば、事故機は送電線のすぐ上で前部を斜め上に向けて上昇しようとしていたが、突然逆さまにひっくり返りローター部分を下にして、後部から煙を出しながら海中に落ちていったという[7]。搭乗していた乗員5人は全員殉職した[9][10]

事故のその後

同乗者が全員死亡しているため事故原因は断定されていないが、機長及び副操縦士が架線を認識していなかったこと、航空障害灯を視認していなかったことが事故原因として推測されている[11][12]。この事故をめぐり六管本部の説明が二転三転したことから批判を受けた[13][14]。発生当初、六管本部は事故は通常のパトロール業務であったと記者会見で説明し、2回のデモンストレーション飛行の合間に起きた事実を公表しなかった[15]

その直後デモンストレーションをしていたことが発覚、「隠蔽」しようとしていた、説明責任を果たしていない、などの批判がマスメディアから出されることになった[16][17][18]。そのため9月3日に前原誠司国土交通大臣(当時)は、六管本部の本部長と次長を9月10日付で異動させる人事を発令し、事実上の更迭処分となった[19][20]

事故機の残骸は現場海域から引揚げられ、8月22日に広島航空基地の格納庫に搬入された[21]。事故機は広島航空基地で証拠品として保管され、2011年夏に六管本部が管理する広島市南区の倉庫に移された。その後、高松海上保安部による捜査終結を受け、2012年7月に解体された。広島航空基地は事故の風化防止のため、「あきづる」の識別板を保存展示することを検討している。

脚注

  1. ^ 海保ヘリ墜落、4人死亡 瀬戸内海・香川県沖送電線に接触か”. 日本経済新聞 (2010年8月18日). 2020年10月24日閲覧。
  2. ^ 海保ヘリ墜落 引き上げの4人は心肺停止 海底で機体確認」『MSN産経ニュース産業経済新聞社、2010年8月18日。オリジナルの2010年8月26日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  3. ^ a b c 香川沖で海保ヘリ墜落、4人死亡 島結ぶ高圧線に接触」『西日本新聞西日本新聞社、2010年8月19日。オリジナルの2010年8月26日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  4. ^ 海保ヘリ墜落で4人死亡1人不明 電線接触の原因不明 (1/2ページ)」『MSN産経ニュース』産業経済新聞社、2010年8月18日。オリジナルの2010年8月24日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  5. ^ 海保ヘリ墜落で4人死亡1人不明 電線接触の原因不明 (2/2ページ)」『MSN産経ニュース』産業経済新聞社、2010年8月18日。オリジナルの2010年10月26日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  6. ^ 電線注意喚起なし、デモ前提か 海保ヘリ墜落」『MSN産経ニュース』産業経済新聞社、2010年8月20日。オリジナルの2010年8月23日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  7. ^ a b 海保ヘリ墜落:デモ飛行の間に 巡視艇から司法修習生見学」『毎日新聞毎日新聞社、2010年8月19日。オリジナルの2010年8月22日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  8. ^ 海保ヘリ墜落、死亡4人の身元判明 機体は海中で逆さまに 「トッキュー」出動」『MSN産経ニュース』産業経済新聞社、2010年8月18日。オリジナルの2010年8月21日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  9. ^ 海保ヘリ墜落:廃船調査が原因か 確認で降下…見解発表」『毎日新聞』毎日新聞社、2010年8月19日。オリジナルの2010年8月22日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  10. ^ 海保ヘリ墜落:行方不明だった整備士の遺体を発見」『毎日新聞』毎日新聞社、2010年8月21日。オリジナルの2010年8月22日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  11. ^ 航空事故調査報告書 AA2012-3-1 (Report). 日本国 国土交通省 運輸安全委員会. 30 March 2012. 2020年8月17日閲覧
  12. ^ 香川沖・海保ヘリ墜落:右脚部が送電線に 事故調「気付かず接触」」『毎日新聞』毎日新聞社、2010年8月21日。オリジナルの2010年8月22日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  13. ^ 海保ヘリ墜落:6管本部長が謝罪 デモ飛行隠ぺい」『毎日新聞』毎日新聞社、2010年8月22日。オリジナルの2010年8月23日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  14. ^ 海保ヘリ墜落:飛行中のデータを修復と発表 説明を変更」『毎日新聞』毎日新聞社、2010年9月3日。オリジナルの2010年9月4日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  15. ^ 海保ヘリ墜落:デモ飛行隠し…「司法修習生に配慮」」『毎日新聞』毎日新聞社、2010年8月20日。オリジナルの2010年8月21日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  16. ^ 海保ヘリ墜落:デモ飛行の隠ぺい 6管本部長も了承」『毎日新聞』毎日新聞社、2010年8月21日。オリジナルの2010年8月23日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  17. ^ 【海保ヘリ墜落】「組織的隠蔽」認める 6管本部」『MSN産経ニュース』産業経済新聞社、2010年8月21日。オリジナルの2010年8月24日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  18. ^ 【海保ヘリ墜落】組織的隠蔽…「そう言われても仕方ない」 6管本部会見」『MSN産経ニュース』産業経済新聞社、2010年8月21日。オリジナルの2010年8月24日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  19. ^ 海保ヘリ墜落:「厳正に処分」…事故対応で前原国交相」『毎日新聞』毎日新聞社、2010年8月21日。オリジナルの2010年8月22日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  20. ^ 海保6管本部長を更迭 国交相、ヘリ墜落で」『日本経済新聞日本経済新聞社、2010年9月3日。オリジナルの2025年5月5日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  21. ^ 海保ヘリ墜落:機体を公開 上部大きく損壊」『毎日新聞』毎日新聞社、2010年8月22日。オリジナルの2010年8月23日時点におけるアーカイブ。2025年5月5日閲覧。

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