不思議の国のアリスの挿絵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/16 01:26 UTC 版)
ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』(1865年)とその続編『鏡の国のアリス』(1871年)は、いずれもジョン・テニエルの挿絵をつけて刊行された。『不思議の国のアリス』の刊行当時、キャロルが作家として無名に等しかったのに対し、テニエルは風刺漫画誌『パンチ』のトップ・イラストレーターであり、『アリス』の普及の少なくともその初期にあってはテニエルの知名度が大きく貢献したと考えられる[1]。アリスの物語が刊行された1860年代は、イギリスでは書籍・雑誌の挿絵の黄金時代にあたり、二つのアリスの本は当時とりたてて重要視されたわけではなかったが、今日では19世紀以来受け継がれてきた挿絵本のなかでもっとも人気のある作品となっている[2]。
注釈
- ^ キャロルの挿絵に対するこだわりを示すエピソードとして次のようなものがある。『シルヴィーとブルーノ』(1889–1893年)の挿絵を受け持ったハリー・ファーニスが、できあがった挿絵を持っていくと、キャロルは拡大鏡を持ち出して1平方センチあたりの線の数を数えてテニエルのそれと比較したという。またキャロルは二つのアリスの本の制作経験をもとにして挿絵画家に関する論文か小冊子を書く考えをファーニスに漏らしたことがあったが、これは結局書かれずじまいとなった[13]。
- ^ テニエルが不満を示したのは、刷り上った挿絵のいくつかが印刷の工程がいい加減だったせいで明暗のコントラストが減じられていたためであったらしい。このことからテニエルがアリスの挿絵を完全なキアロスクーロの作品として考えていたことがわかる[16]。
- ^ 電気分解を利用してつくる銅の複製版。
- ^ 従来、テニエルの挿絵のなかで、キャロルの気に入ったものはハンプティ・ダンプティの絵だけだった、といったことが言われてきた。しかしキャロルがそんなにテニエルに失望していたのであればそもそも続編の挿絵の依頼を彼に持ちかけるはずがない、ということを考えれば説得力のない話であるとわかる[30]。
- ^ 幼児向けに脚色された『子供部屋のアリス』のために、テニエル自身が過去の自分の挿絵に彩色を施したもの。
出典
- ^ ハンチャー (1997)、xix–xx頁。
- ^ ハンチャー (1997)、188頁。
- ^ 吉田 (2007), 80頁。
- ^ ハンチャー (1997)、172–173頁。
- ^ 中島 (1994)、91頁。
- ^ 中島 (1994)、91–93頁。
- ^ ハンチャー (1997)、55頁。
- ^ 吉田 (2007)、 81頁。
- ^ ハンチャー (1997)、51–52頁。
- ^ ハンチャー (1997)、42–43頁。
- ^ ハンチャー (1997)、44頁。
- ^ 桑原 (1976)、29頁。
- ^ ハンチャー (1997)、182–183頁。
- ^ ハンチャー (1997)、170–171頁。
- ^ ハンチャー (1997)、171–172頁。
- ^ ハンチャー (1997)、171–173頁。
- ^ ハンチャー (1997)、179–180頁。
- ^ 海野 (1976)、26頁。
- ^ ハンチャー (1997)、181–182頁。
- ^ ハンチャー (1997)、183–184頁。
- ^ 吉田 (2007)、82頁。
- ^ ハンチャー (1997)、184–186頁
- ^ ハンチャー (1997)、186頁。
- ^ ハンチャー (1997)、188頁・190頁
- ^ ハンチャー (1997)、188–189頁。
- ^ ハンチャー (1997)、189頁。
- ^ ハンチャー (1997)、189–190頁・198頁。
- ^ ハンチャー (1997)、190–191頁
- ^ ハンチャー (1997)、198頁。
- ^ ハンチャー (1997)、220頁。
- ^ ハンチャー (1997)、222–239頁。
- ^ 中島 (1994)、96–98頁。
- ^ ハンチャー (1997)、3頁。
- ^ ハンチャー (1997)、8頁。
- ^ a b 桑原 (1976)、30頁。
- ^ 海野 (1976)、28頁。
- ^ ハンチャー (1997)、175–177頁。
- ^ ハンチャー (1997)、175–178頁。
- ^ ハンチャー (1997)、178–179頁。
- ^ 海野 (1976)、30–32頁。
- ^ a b c 吉田 (2007)、83頁。
- ^ 吉田 (2007)、86頁。
- ^ 海野 (1976)、29頁。
- ^ 海野 (1976)、26–27頁。
- ^ 吉田 (2007)、83–87頁。
- ^ 吉田 (2007)、93頁。
- ^ 吉田 (2007)、94頁。
- ^ 吉田 (2007)、89頁。
- ^ 門馬 (1991)、16頁。
- ^ 吉田 (2007)、89–90頁。
- ^ “The Sublime Alice in Wonderland Illustrations of Tove Jansson, Creator of the Globally-Beloved Moomins (1966) | Open Culture” (英語). 2023年5月20日閲覧。
- ^ ルイス・キャロル著サルバドール・ダリ作画『Alice's Adventures in Wonderland150 Anv Edition』ISBN 978-0691170022という本になっている。
- ^ 吉田 (2007)、92頁。
- ^ 吉田 (2007)、90頁。
- ^ “不思議の国のアリス (角川文庫クラシックス)”. 2023年3月2日閲覧。
- ^ “W10ふしぎの国のアリス”. ポプラ社. 2023年3月2日閲覧。
- ^ “ルイス・キャロル、宇野亜喜良(絵) / ふしぎの国のアリス - WORDSONG”. ルイス・キャロル、宇野亜喜良(絵) / ふしぎの国のアリス - WORDSONG. 2023年3月2日閲覧。
- ^ “https://twitter.com/sakuba/status/1003247071833382916”. Twitter. 2023年3月2日閲覧。
- ^ “「不思議の国のアリス」と金子國義の世界 | MUUSEO SQUARE”. Muuseo Square (ミューゼオスクエア). 2023年3月2日閲覧。
- ^ “LUCAS MUSEUM|山本容子美術館 » Archive”. www.lucasmuseum.net. 2023年3月2日閲覧。
- ^ allthingsaliceinwonderland. “All Things Alice In Wonderland”. Tumblr. 2023年3月2日閲覧。
- ^ 『「カラー名作少年少女世界の文学」4巻 イギリス編3』小学館、1968年。
- ^ カラー名作少年少女世界の文学. 小学館. (1968)
- ^ “少年少女世界の文学 4 2版 イギリス編 3”. 2023年3月2日閲覧。
- ^ “okamaが挿絵を担当! ポップな絵柄で楽しめる『ふしぎの国のアリス』”. KAI-YOU.net | POP is Here .. 2023年3月2日閲覧。
- ^ 吉田 (2007)、94–96頁。
- ^ ルイス・キャロル 『地下の国のアリス』 安井泉訳、新書館、2005年。
- ^ ペーター・ニューエル画 『新注 不思議の国のアリス』 『新注 鏡の国のアリス』 高山宏訳、東京図書、1994年 ※マーティン・ガードナーの注釈書
- ^ アーサー・ラッカム画 『不思議の国のアリス』 高橋康也、高橋迪訳、新書館、1985年。2005年に新装版
- ^ チャールズ・ロビンソン画 『不思議の国のアリス』 福島正実訳、立風書房、1982年
- ^ トーベ・ヤンソン画 『不思議の国のアリス』 村山由佳訳、メディアファクトリー、2006年
- ^ ドゥシャン・カーライ画 『不思議の国のアリス』 矢川澄子訳、新潮社、1990年/ 同『鏡の国のアリス』 1991年
- ^ リスベート・ツヴェルガー画 『不思議の国のアリス』 石井睦美訳、BL出版、2008年
- ^ ヤン・シュヴァンクマイエル画 『不思議の国のアリス』 『鏡の国のアリス』 久美里美訳、東京エスクァイアマガジンジャパン、2006年。2011年に国書刊行会より復刊。
- ^ 和田誠画 『不思議の国のアリス』 福島正実訳、角川文庫クラシックス、1980年
- ^ 中島潔画 『ふしぎの国のアリス』 蕗沢忠枝訳、ポプラ社文庫、1982年
- ^ 宇野亜喜良画 『ふしぎの国のアリス』 立原えりか訳、小学館、1988年
- ^ 作場知生画 『不思議の国のアリス』 楠悦郎訳、新樹社、1987年
- ^ 金子國義画 『不思議の国のアリス』 『鏡の国のアリス』 矢川澄子訳、新潮文庫、1994年
- ^ 山本容子画 『ふしぎの国のアリス』 高杉一郎訳、講談社青い鳥文庫、2008年/同 『鏡の国のアリス』 2010年
- ^ okama画 『ふしぎの国のアリス』 『かがみの国のアリス』 河合祥一郎訳、角川つばさ文庫、2010年
- 1 不思議の国のアリスの挿絵とは
- 2 不思議の国のアリスの挿絵の概要
- 3 テニエル以後
- 4 ギャラリー
- 5 外部リンク
- 不思議の国のアリスの挿絵のページへのリンク