一般的な有界作用素の本質的スペクトル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/12/31 08:55 UTC 版)
「本質的スペクトル」の記事における「一般的な有界作用素の本質的スペクトル」の解説
一般の場合、X はバナッハ空間で、T は X 上の有界作用素を表すものとする。様々な文献において、本質的スペクトルの異なる定義が与えられており、それらは同値ではない。 第1の本質的スペクトル σess,1(T) は、λI − T が半フレドホルム作用素でないような全ての λ の集合として与えられる。ここである作用素が半フレドホルムであるとは、その値域が閉であり、その核あるいは余核が有限次元であることを言う。 第2の本質的スペクトル σess,2(T) は、λI − T の値域が閉でないか、λI − T の核が無限次元であるような全ての λ の集合として与えられる。 第3の本質的スペクトル σess,3(T) は、λI − T がフレドホルム作用素でないような全ての λ の集合として与えられる。ここである作用素がフレドホルムであるとは、その値域が閉であり、その核および余核が有限次元であることを言う。 第4の本質的スペクトル σess,4(T) は、λI − T が指数ゼロのフレドホルム作用素でないような全ての λ の集合として与えられる。ここでフレドホルム作用素の指数とは、その核の次元と余核の次元の差のことを言う。 第5の本質的スペクトル σess,5(T) は、レゾルベント集合 C \ σ(T) と共通部分を持たない C \ σess,1(T) の全ての成分と、σess,1(T) との合併として与えられる。 上のどの定義に対しても、作用素の本質的スペクトルは閉集合である。さらに、 σ e s s , 1 ( T ) ⊂ σ e s s , 2 ( T ) ⊂ σ e s s , 3 ( T ) ⊂ σ e s s , 4 ( T ) ⊂ σ e s s , 5 ( T ) ⊂ σ ( T ) ⊂ C {\displaystyle \sigma _{\mathrm {ess} ,1}(T)\subset \sigma _{\mathrm {ess} ,2}(T)\subset \sigma _{\mathrm {ess} ,3}(T)\subset \sigma _{\mathrm {ess} ,4}(T)\subset \sigma _{\mathrm {ess} ,5}(T)\subset \sigma (T)\subset \mathbf {C} } が成立するが、どの包含関係も狭義である可能性がある。しかしながら、自己共役作用素に対しては、上の全ての定義に対する本質的スペクトルは一致する。 本質的スペクトルの「半径」を r e s s , k ( T ) = max { | λ | : λ ∈ σ e s s , k ( T ) } {\displaystyle r_{\mathrm {ess} ,k}(T)=\max\{|\lambda |:\lambda \in \sigma _{\mathrm {ess} ,k}(T)\}} で定義する。スペクトルは異なる可能性があるが、その半径は全ての k に対して等しい。 k = 1,2,3,4 に対して、本質的スペクトル σess,k(T) はコンパクトな摂動の下で不変であるが、k = 5 に対してはそのような事実は成立しない。k = 4 の場合は、コンパクトな摂動に独立なスペクトルの部分を与えるものである。すなわち、 σ e s s , 4 ( T ) = ⋂ K ∈ K ( X ) σ ( T + K ) {\displaystyle \sigma _{\mathrm {ess} ,4}(T)=\bigcap _{K\in K(X)}\sigma (T+K)} が成立する。ここで K(X) は X 上の全てのコンパクト作用素の集合を表す。 第2の定義はワイルの条件を一般化したものである。すなわち、σess,2(T) は、特異列が存在しないような全ての λ の集合として与えられる。
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