ローレンツ変換の具体的な形
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 06:49 UTC 版)
「特殊相対性理論」の記事における「ローレンツ変換の具体的な形」の解説
ローレンツ変換の具体的な形を求める為、まずは基底をより解析がしやすいものに置き換える。 基底 e→0, e→1, e→2, e→3 の「空間部分」である e→1, e→2, e→3 の張るミンコフスキー空間上の部分空間を E とし、同様に基底 e′→0, e′→1, e′→2, e′→3 の空間部分である e′→1, e′→2, e′→3 の張るミンコフスキー空間上の部分空間を E′ とする。これらはそれぞれの慣性座標系における空間方向を表している。 e→1, e→2, e→3 を E 内で回転した別の正規直交基底に取り替えても、e→0, e→1, e→2, e→3 と実質的に同じ慣性系を表しているとみなしてよい。そこで (e→1, e→2, e→3), (e′→1, e′→2, e′→3) をそれぞれ E 内、E′ 内で回転することで、ローレンツ変換 φ の行列表示 Λ を簡単な形で表すことを試みる。 E と E′ の共通部分 E ∩ E′ を U とすると、U は4次元ベクトル空間上の2つの3次元部分ベクトル空間の共通部分なので、U は2次元(以上)のベクトル空間である。従って E 内で (e→1, e→2, e→3) を回転することで、e→2, e→3 ∈ U としてよく、同様に E′ 内の回転により e′→2, e′→3 ∈ U とできる。最後に U 内で e→'1, e→'2 を回転することで e′→2 = e→2、e′→3 = e→3としてよい。 これらの基底に対し、(L1)式を満たすローレンツ変換 φ の行列表現を Λ = (Λμν)μν とする。これはすなわち、 ( e → 0 ′ , e → 1 ′ , e → 2 ′ , e → 3 ′ ) = ( e → 0 , e → 1 , e → 2 , e → 3 ) Λ {\displaystyle ({\vec {e}}'_{0},{\vec {e}}'_{1},{\vec {e}}'_{2},{\vec {e}}'_{3})=({\vec {e}}_{0},{\vec {e}}_{1},{\vec {e}}_{2},{\vec {e}}_{3})\Lambda } を満たすという事であり、これら2つの基底における座標の成分表示をそれぞれ (ct, x, y, z)、(ct′, x′, y′, z′)とすると ( c t ′ x ′ y ′ z ′ ) = Λ ( c t x y z ) {\displaystyle \left({\begin{array}{c}ct'\\x'\\y'\\z'\end{array}}\right)=\Lambda \left({\begin{array}{c}ct\\x\\y\\z\end{array}}\right)} (L2) が成立するという事でもある。 e′→2 = e→2、e′→3 = e→3 であったので、ローレンツ変換の行列表示は、 Λ = ( ∗ 1 1 ) {\displaystyle \Lambda =\left({\begin{array}{cc|cc}*&&&\\&&&\\\hline &&1&\\&&&1\end{array}}\right)} という形であり、ローレンツ変換がミンコフスキー空間における「回転」であったことを利用すれば、上の行列の(*)の部分が、 ( cosh ζ − sinh ζ − sinh ζ cosh ζ ) {\displaystyle \left({\begin{array}{cc}\cosh \zeta &-\sinh \zeta \\-\sinh \zeta &\cosh \zeta \end{array}}\right)} という形であることがわかる。これを導く厳密な方法はいくつかあるが、簡便な方法としては虚数単位 i を用いて時間軸を τ = ict と置く事で通常のユークリッド空間の回転とみなせる(ウィック回転)という事実を使うものがある。 最終的に2つの基底における座標の成分表示の関係(L2)式は以下のように書ける事がわかる。 定理(ローレンツ変換の具体的な形) ― 必要なら空間方向の座標軸を回転させる事で、ローレンツ変換は ( c t ′ x ′ y ′ z ′ ) = ( c t cosh ζ − x sinh ζ − c t sinh ζ + x cosh ζ y z ) {\displaystyle \left({\begin{array}{c}ct'\\x'\\y'\\z'\end{array}}\right)=\left({\begin{array}{c}ct\cosh \zeta -x\sinh \zeta \\-ct\sinh \zeta +x\cosh \zeta \\y\\z\end{array}}\right)} (L3) と表示できる。 この値 ζ は正規直交基底の取り方に依存せず、ローレンツ変換 φ の固有値のみによって決まることが知られており、ζ を φ のラピディティという。なお、ζ は ζ = arccosh ( η ( e → 0 , e → 0 ′ ) ) {\displaystyle \zeta =\operatorname {arccosh} (\eta ({\vec {e}}_{0},{\vec {e}}'_{0}))} と具体的に求めることもできる。
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