ログローリングの条件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/27 10:06 UTC 版)
「ログローリング」の記事における「ログローリングの条件」の解説
ところでどのような条件の下でログローリングが成立するのであろうか?理論的には2つの必要条件が考えられる。一つは分離可能性であり、もう一つは取引連合が集合的順序、すなわち集合的な選好に与える影響である。 分離可能性とは、2つ以上の議題(上の例では議題1と議題2)がそれぞれ独立であることを指す。すなわち議題1での議員Aでの選好は(法案Xの可決)>(法案Xの否決)であるが、この選好は議題2における選択肢(すなわち法案Yを可決させるか否決させるか)を考慮した際にも変化しない。議員Bに関しても同様である。 第2の条件は次のようなものである。上記の例の取引連合で、議員Xは以下のような立場に立っている。 (1)議題2に関して選好が(Yの否決)>(Yの可決)であり、この選好通りに投票すればこれを実現することができる。一方で投票を別のやり方に変えればYを可決させることができる。 (2)議題1に関しては選好が(Xの可決)>(Xの否決)であるが、どのように投票してもこれを実現することが不可能である。 (3)議題1の方が議題2より関心が高い。すなわち選好強度が(Yの否決)>(Yの可決)よりも(Xの可決)>(Xの否決)の方が強い。 これに対して、議員Bはちょうど対称的な立場に立っている。 (1')議題1に関して(Xの否決)>(Xの可決)という選好を持っており、この選好に忠実であれば実現することが可能である。一方で投票を変えればXを可決させることができる。 (2')議題2に関して選好が(Yの可決)>(Yの否決)であるが、どのように投票してもこれを実現することは不可能である。 (3')議題2の方が議題1より関心が高い。すなわち選好強度が(Xの否決)>(Xの可決)よりも(Yの否決)>(Yの可決)の方が強い。 このように(1)~(3)とそれに対応する(1')~(3')にそれぞれの立場があるとき、ログローリングは成立する。 ところで、これまで見てきたログローリングの理論には一つの前提があると考えられる。すなわちある程度議員の自律性が担保されている場合の方が、ログローリングは成立しやすい。すなわち党議拘束などの政党による拘束が無いか緩いところでは、ログローリングはより多く見られる。これが政党の規律の緩いアメリカの連邦議会において、ログローリングが他国の議会よりも頻繁に見られる原因であろう。
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