ル・シャトリエの原理とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 固有名詞の種類 > 方式・規則 > 理論・法則 > 理論・法則 > 自然科学の法則 > ル・シャトリエの原理の意味・解説 

ルシャトリエ‐の‐げんり【ルシャトリエの原理】

読み方:るしゃとりえのげんり

可逆反応平衡状態にあるとき、濃度圧力温度などの条件変えると、その条件打ち消す方向反応進行し新し平衡達するという法則1884年ル=シャトリエが、87年K=Fブラウン提唱平衡移動法則ル=シャトリエブラウン法則


ルシャトリエの原理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/30 09:02 UTC 版)

ル・シャトリエの原理(ル・シャトリエのげんり、: Le Chatelier's principle)もしくはルシャトリエの法則(ルシャトリエのほうそく、Le Chatelier's law)とは、化学平衡状態にある反応系において、その状態に対して何らかの変動を起こさせたときに、平衡が移動する方向を示す原理のことであり、1884年アンリ・ルシャトリエによって発表された。1887年カール・ブラウンによっても独立して発表されたため、ルシャトリエ=ブラウンの原理 (Le Chatelier – Braun principle) とも呼ばれる。

概要

ルシャトリエの原理の内容は次の通りである[1]

平衡状態にある反応系において、状態変数(温度圧力(全圧)、反応に関与する物質の分圧濃度)を変化させると、その変化を相殺する方向へ平衡は移動する。

すなわち、反応温度を上げた場合、平衡は反応熱を吸収して反応温度を下げる方向へ移動する。反応温度を下げた場合、平衡は反応熱を発生させて反応温度を上げる方向へ移動する。気体の反応において全圧を上げた場合、平衡は気体分子の数を減らして圧力を下げる方向へ移動する。全圧を下げた場合、平衡は気体分子の数を増やして圧力を上げる方向へ移動する。また反応に関与しているある物質の分圧や濃度を上げた場合、平衡はその物質を消費して分圧や濃度を下げる方向へ移動する。反応に関与しているある物質の分圧や濃度を下げた場合、平衡はその物質を生成して分圧や濃度を上げる方向へ移動する。

温度による平衡の移動

例として

の反応について考える。

平衡状態

平衡定数 K はそれぞれの化学種Aの分圧(より厳密にはフガシティー)を PA とすれば

と表される。

また、平衡定数 K は反応ギブズエネルギーΔG との間に

の関係があり(R気体定数T絶対温度)、さらに反応エンタルピーΔH、反応エントロピーΔS

の関係もある。そこで反応エンタルピー、反応エントロピーは温度によらず一定とすると

となる。この式をファントホッフの式という[2]。反応温度による平衡の移動についてはファント・ホッフによってル・シャトリエよりも早く平衡移動の原理として考察されていた[3]。この式によれば反応エンタルピーが正(吸熱反応)ならば、反応温度が上昇すると平衡定数は増加し、生成物への移行がより有利になる。逆に反応エンタルピーが負(発熱反応)ならば、反応温度が上昇すると平衡定数は減少し、原料への逆反応がより有利になる。

アンモニアの生成反応は発熱反応、すなわち反応エンタルピーは負の反応である。よってファントホッフの式により反応温度が上昇すると平衡定数は減少し、吸熱方向の反応である原料への逆反応が有利となる。このようにしてルシャトリエの原理が説明できる。

なお、一定容積下で温度を変化させた場合には全圧が変化するため、それによる平衡の移動と競合することになりルシャトリエの原理によって平衡の移動する方向を予想できなくなることがある。

全圧による平衡の移動

反応系を加圧もしくは減圧して全圧をa倍にすることを考える。すると平衡定数の式の右辺は

となる。

a>1、すなわち加圧した場合、この式の値は K よりも小さくなって平衡が崩れる。そのため分母を減らして分子を増やす方向、すなわちアンモニアが生成する方向へ反応が進行する。a<1、すなわち減圧した場合、この式の値は K よりも大きくなって平衡が崩れる。そのため分母を増やして分子を減らす方向、すなわちアンモニアが原料に戻る方向へ反応が進行する。

一般の気体の反応においてaの指数は(反応式の生成系の分子数)-(反応式の反応系の分子数)となる。よって加圧した場合はいずれにせよ分子数の少ない側へ平衡が移動し、減圧した場合分子数の多い側へ平衡が移動することになる。このようにしてルシャトリエの原理が説明できる。

分圧、濃度による平衡の移動

平衡状態となっているこの系に、水素やアンモニアの分圧、温度を変化させずに、窒素を加えて窒素の分圧を増やしてやると平衡定数の式の右辺の分母が大きくなって平衡状態が崩れる。そうすると分母を減らし分子を増やす方向、すなわち窒素を消費してアンモニアを増やす方向へ平衡が移動し、再び等号が成立する。このようにしてルシャトリエの原理が正しいことが説明できる。

なお、反応系の全圧を一定に保ったまま窒素を加えた場合、窒素の分圧は増えるが水素の分圧が減少するため、分母は必ずしも大きくなるとは限らない。このように2つ以上物質の分圧や濃度を同時に変化させてしまった場合には単純にルシャトリエの原理から平衡の移動する方向を予想することはできないので注意する必要がある。

脚注

  1. ^ Atkins(2001)、p. 236。
  2. ^ Atkins(2001)、p. 237。
  3. ^ van't Hoff.

参考文献


ル・シャトリエの原理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/20 16:49 UTC 版)

アンリ・ルシャトリエ」の記事における「ル・シャトリエの原理」の解説

ル・シャトリエの原理(ルシャトリエ-ブラウンの原理平衡移動原理とも呼ばれる)は化学平衡に関する経験則で「平衡状態にある物質系外部作用によって変化をうけるとき、その変化外部作用反抗する結果になるような方向におこる。」ということである。平衡状態にある物質系に対して外部から濃度圧力温度などを変化させるとその変化小さくさせる方向平衡移動する

※この「ル・シャトリエの原理」の解説は、「アンリ・ルシャトリエ」の解説の一部です。
「ル・シャトリエの原理」を含む「アンリ・ルシャトリエ」の記事については、「アンリ・ルシャトリエ」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ル・シャトリエの原理」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「ル・シャトリエの原理」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



ル・シャトリエの原理と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ル・シャトリエの原理」の関連用語

ル・シャトリエの原理のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ル・シャトリエの原理のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのルシャトリエの原理 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのアンリ・ルシャトリエ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS