モリンガ蒸しとは? わかりやすく解説

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モリンガ蒸し

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/10 07:57 UTC 版)

2022年に横浜で撮影されたモリンガの葉。

モリンガ蒸し(Moringa Steam Therapy)は、モリンガMoringa oleifera)の葉を煎じ、その蒸気を下半身を中心に浴びる温熱療法の一種である。

ハーブ蒸しに分類されるが、モリンガ特有の高い栄養価に注目し、美容健康、体質改善を目的として用いられる。

この療法は、2018年に日本で考案され、特定のサロンによって導入されたことをきっかけに普及した。モリンガ蒸しは、特定の団体によって施術手法の標準化や普及活動が行われているとされる。

特徴と目的

モリンガ蒸し専用の壺に入れたモリンガ葉(2018年撮影)

モリンガ蒸しは、韓国を起源とするよもぎ蒸しと同様に、専用の椅子に座り、下半身を中心に蒸気を浴びる温熱療法である。施術方法や用いる器具などはよもぎ蒸しとほぼ同じで、異なる点は使用する植物にモリンガ(ワサビノキ)の葉を用いる点である。

モリンガは栄養価が高い植物として知られ、温活やリラクゼーション、冷え性スキンケア目的に用いられることがある。香りは緑茶や牧草に似た穏やかな草の香りとされ、施術中のリラックス効果を意図して使用されている。

モリンガ蒸しに使用される葉については、フィリピンなどでEUやUSDAのオーガニック認証を受けた栽培が行われており、日本国内ではこうしたモリンガ葉を使用した施術を行う団体も存在する。[1]

栄養成分と食品利用

モリンガの葉は、古くから「ミラクルツリー(奇跡の木)」とも呼ばれ、その栄養価の高さで知られている。葉には、ビタミンACE鉄分カルシウムマグネシウムカリウム亜鉛などのミネラル類が豊富に含まれており、植物性たんぱく質食物繊維もバランスよく含まれている[2]

特に鉄分やカルシウムは一般的な野菜と比較しても高濃度で含まれており、栄養補助食品としても注目されている。また、葉にはポリフェノールフラボノイドなどの抗酸化成分も含まれており、健康維持のための食品素材として利用されることが多い[3]

海外における研究動向

モリンガの葉は、その豊富な栄養成分と機能性により、近年はインド、フィリピン、ナイジェリアアメリカなど各国で注目されており、食品・医療・農業分野においてさまざまな研究が行われている。

栄養成分と生理活性に関する研究

モリンガの葉の栄養と健康効果については、国際的な学術研究も数多く存在する。たとえば、2023年にCAB Internationalが発行したレビュー論文では、モリンガの葉や種子が豊富なビタミン、ミネラル、必須アミノ酸を含み、抗酸化、抗炎症、抗菌、肝保護作用など、多面的な生理活性を示すことが報告されている[4]

妊婦・授乳中の栄養補助としての文化的背景と研究

フィリピンやインドではモリンガが伝統的に妊婦や授乳中の女性の栄養補助として使われており、葉を煮出したスープや料理の中で日常的に摂取されている。こうした文化的背景をもとに、モリンガの栄養成分が貧血予防や乳汁分泌促進に役立つ可能性についての臨床研究も進められている[5]

国際機関による評価と提言

国連のFAO(国際連合食糧農業機関)やWHO(世界保健機関)などもモリンガの栄養的価値に注目しており、途上国における栄養改善や母子保健の一環として、活用が提案されている[6]

健康分野における応用可能性

モリンガの薬理学的特性に関する別のレビューでは、抗糖尿病、抗高血圧、抗腫瘍作用など、さまざまな健康分野においてモリンガの応用可能性が示されており、栄養補助食品機能性食品としての研究が進められている[7]

栄養不良対策としての活用研究

2024年に発表された最新の研究では、モリンガの葉がカロテノイド、カルシウム、鉄、食物繊維などの重要栄養素を豊富に含み、栄養不良の予防に有用である可能性が示されている[8]

抗菌・抗酸化作用に関する研究

モリンガ(Moringa oleifera)の葉には、抗菌作用や抗酸化作用を示す成分が多く含まれており、これらの特性がさまざまな応用研究につながっている。たとえば、モリンガ葉の蒸留液は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)やカンジダ菌(Candida albicans)などの病原性微生物に対して抗菌・抗真菌効果を示すことが報告されている[9]。また、モリンガ葉の抽出物には強い抗酸化能があり、食品の酸化防止や健康食品素材としての可能性も注目されている[10]

こうした性質を持つモリンガ葉を用いた温熱療法として、蒸気によってその成分を吸入または皮膚を通じて取り入れる試みが一部で行われている。

使用方法

モリンガ蒸しは、専用の座浴器(椅子)とケープまたはマントを用いて行われる。煎じたモリンガ葉の蒸気を、主に下半身に30〜40分程度あてるのが一般的な方法である。座っているだけだが大量に汗をかきカロリー消費も高いため、最大でも60分までにすることが望ましい。

施術中は裸にマントをかぶり、蒸気が体内に巡るようにしながらリラックスした状態で過ごす。

モリンガ葉は乾燥させたものを使用し、煮出す際にはお湯に直接入れる、または座浴剤としてブレンドされた製品を使うこともある。施術後にはサラサラとした発汗が得られ、温浴による代謝促進やリラックス効果を実感する利用者も多い。

よもぎ蒸しとの違いと安全性

モリンガ蒸しは、ハーブ蒸しの中でも比較的新しい療法であるが、従来から知られるよもぎ蒸しと比較すると、使用する植物の成分に明確な違いがある。

ヨモギArtemisia princeps)に含まれる代表的な揮発性成分にはツジョンカンファーがあり、これらは神経刺激作用や子宮収縮作用を持つとされている。そのため、伝統的に月経を促す作用(エメナゴーグ作用)を目的に用いられてきた一方で、妊娠中や妊活中の高温期には避けるべきとされるケースもある。

一方、モリンガの葉に含まれる揮発性化合物は、(E)-2-ヘキセナール、リナロールゲラニオールバニリンなどで、主に抗酸化・抗菌・リラックス作用を持つとされる穏やかな成分が中心である。[11] これらの成分には現在のところ子宮収縮作用があるという科学的根拠はなく、香気の性質としてもよもぎに比べて刺激性が低く、緑茶や牧草に似た穏やかな香りを持つとされる。

また、モリンガ葉は一部の国(例:フィリピン、インド)では妊婦向けの栄養補助としても推奨されており、経口摂取でさえ適量であれば妊娠中に取り入れられている。そのため、経皮吸収や蒸気吸入という限定的な使用法であれば、より安全性は高いと考えられている。

このように、子宮に対する影響の懸念があるよもぎと比較して、モリンガ葉は妊娠中や妊活中の利用にも柔軟に対応できる植物として注目されている。

妊娠中・妊活中の利用について

※ よもぎ蒸しとの成分比較や刺激性に関する情報は「#よもぎ蒸しとの違いと安全性」も参照。 従来のハーブ蒸し(よもぎ蒸しなど)では、使用される植物にツジョンやカンファーなどの成分が含まれていることがあり、これらには子宮収縮を促す可能性があるため、妊娠中や妊活中の利用は慎重に行うべきとされている[12]

一方で、モリンガの葉には、子宮収縮作用があると明確に確認された成分は現在のところ報告されていない。葉に含まれる主要な揮発性成分には(E)-2-ヘキセナール、リナロール、ゲラニオール、バニリンなどがあり、これらは抗酸化・抗菌・鎮静などの穏やかな作用を持つとされている[13]

また、モリンガは栄養価が非常に高いため、フィリピンやインドなど一部の国では妊婦への栄養補助として葉の摂取が積極的に推奨されている[14]

そのため、経口摂取でさえ適量であれば妊娠中に取り入れられている植物であり、蒸気吸収や経皮吸収といった限定的な方法による使用は、さらに安全性が高いと考えられている。ただし、妊娠中の使用に不安がある場合には、かかりつけ医や助産師に相談することが推奨される。

安全性の研究動向

フィリピンの農園で収穫されたモリンガ葉(2018年撮影)

モリンガの根や樹皮を高用量で経口摂取した動物実験では、子宮に影響を及ぼす可能性が報告されている。

しかし、葉に関しては、適量の使用でそのような作用を示すという科学的根拠は確認されておらず、食品や外用の目的で広く使用されている。

WHOやFAOといった国際機関も、モリンガの栄養価に注目しており、妊娠中の栄養補助に活用する地域も存在する。過剰摂取を避け、体調に応じて使用する限りにおいては、比較的安全な植物と考えられている。

蒸気吸収と経皮吸収の違い

モリンガ蒸しにおける有効成分の取り込みは、主に「蒸気吸入」と「経皮吸収」の2つのルートで行われる。施術中は、煎じたモリンガ葉から発生する蒸気がマント内部に広がり、皮膚表面だけでなくからも成分が吸収される。

一般に、植物の揮発性成分はからの吸入によって速やかに血流に乗る経路と、皮膚を通じてゆっくり吸収される経路がある。蒸気浴ではこれらの作用が重なり、比較的穏やかに全身への作用が期待できるとされる[15]

一方で、精油や植物エキスを皮膚に直接塗布する方法では、成分が高濃度で接触するため、より早く経皮吸収される場合もあるが、局所刺激性やアレルギーのリスクも高くなる可能性がある[16]

モリンガ蒸しにおいては、蒸気という媒体を用いることで、皮膚や粘膜への刺激を抑えつつ、全身への穏やかな作用が期待できるとされており、刺激に敏感な人や妊娠中の女性に対しても比較的安心して利用できるという見解もある。

メディア掲載

  • anan 温活特集号』(2022年12月7日発売)
  • 神奈川新聞 温活特集』(2025年2月15日発行)

脚注

  1. ^ https://www.moringa-steam.com/ 日本モリンガ蒸し協会
  2. ^ https://www.jstage.jst.go.jp/article/nettai/9/2/9_41/_pdf ワサビノキ(モリンガ)の種子・葉に含まれる有用成分とその多目的利用 - 日本熱帯農業学会誌(2018)
  3. ^ https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2019010531.pdf モリンガ葉抽出物処理による野菜の増収効果に関する研究 - 農業・食品産業技術総合研究機構(2013)
  4. ^ https://www.cabidigitallibrary.org/doi/pdf/10.5555/20230016134
  5. ^ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5685919/ Gopalakrishnan L, Doriya K, Kumar DS. Moringa oleifera: A review on nutritive importance and its medicinal application. Food Sci Hum Wellness. 2016;5(2):49–56.
  6. ^ https://www.fao.org/3/i8847en/I8847EN.pdf FAO. Nutrition guidelines and standards for school meals. 2019.
  7. ^ https://www.researchgate.net/publication/267932962_Health_Benefits_of_Moringa_oleifera
  8. ^ https://www.researchgate.net/publication/380073232_Nutritional_value_and_therapeutic_potential_of_Moringa_oleifera_a_short_overview_of_current_research
  9. ^ Preethi, R. (2013). “Antibacterial and Antifungal efficacy of steam distillate of Moringa oleifera Lam.”. International Journal of Biomedical and Advance Research. https://www.researchgate.net/publication/259452626 2025年4月10日閲覧。. 
  10. ^ Saini, R. K. (2018). “Bioactive Compounds and Antioxidant Activity of Moringa oleifera Leaves”. Current Issues in Molecular Biology. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6240840/ 2025年4月10日閲覧。. 
  11. ^ https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2019010531.pdf
  12. ^ European Medicines Agency. "Assessment report on Artemisia absinthium L., herba" (2012)
  13. ^ Akinmoladun, F.O. et al., "Volatile constituents and antimicrobial efficacy of Moringa oleifera leaves" in Journal of Medicinal Plants Research, 2015.
  14. ^ World Health Organization, "Guidelines: Daily iron and folic acid supplementation in pregnant women", 2012.
  15. ^ 齋藤隆之『アロマテラピーの科学』講談社, 2009年
  16. ^ 川上光彦「皮膚からの吸収メカニズムと薬剤設計」『薬学雑誌』Vol.141 No.7 (2021)

外部リンク

参考文献




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