ミノタウロス退治
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/13 14:23 UTC 版)
当時、アテーナイはクレータ島のミノス王の勢力下に置かれており、アテーナイはミノス王の命令によって毎年7人の若者と7人の乙女を怪物ミノタウロスへのいけにえとして捧げるよう強要されていた。その事を知って強い憤りを感じたテーセウスは、クレータ島に乗り込んでミノタウロスを退治するため、父王アイゲウスの反対を押し切り、自ら進んでいけにえの一人となった。いけにえを運ぶ船は、国民たちの悲しみを表す印として黒い帆が張られていた。テーセウスは他のいけにえたちと共にその船に乗り込み、クレタ島へ向かった。 ミノタウロスが幽閉されているラビュリントスは、名工ダイダロスによって築かれた脱出不可能と言われる迷宮であった。しかし、ミノス王の娘アリアドネーがテーセウスに恋をしてしまい、彼女はテーセウスを助けるため、彼に赤い麻糸のまりと短剣をこっそり手渡した。テーセウスはアリアドネーからもらったまりの麻糸の端を入口の扉に結び付け、糸を少しずつ伸ばしながら、他のいけにえたちと共に迷宮の奥へと進んでいった。そして一行はついにミノタウロスと遭遇した。皆がその恐ろしい姿を見て震える中、テーセウスはひとり勇敢にミノタウロスと対峙し、アリアドネーからもらった短剣で見事これを討ち果たした。ピンダロスによれば、テーセウスは短剣ではなく、パンクラチオンという格闘技によってミノタウロスを撃破したのだという。その後、テーセウスの一行は糸を逆にたどって、無事にラビリントスの外へ脱出する事ができた。テーセウスはアリアドネーを妻にすると約束し、ミノス王の追手から逃れてアテーナイへ戻るために、アリアドネーと共に急いでクレタ島から出港した。 しかし、彼は帰路の途中、ナクソス島に寄った際に、アリアドネーと別れてしまった。これは、アリアドネーに一目ぼれしたディオニューソス(バックス/バッカス)が彼女をレームノス島にさらってしまったために、行方が分からなくなり、やむをえず船を出港させたとも、薄情なテーセウスがアリアドネーに飽きたため、彼女を置き去りにしたとも言われている。テーセウスはいけにえの一人としてクレタ島へ向かう時、無事クレタ島から脱出できた場合には喜びを表す印として船に白い帆を掲げて帰還すると父王アイゲウスに約束していた。しかし、テーセウスはこの約束を忘れてしまい、出航時の黒い帆のまま帰還した。これを見たアイゲウスは、テーセウスがミーノータウロスに殺されたものと勘違いし、絶望のあまり海へ身を投げて死んだ。その後、アイゲウスが身を投げた海は、彼の名にちなんでエーゲ海と呼ばれるようになった。
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