マジカル・ミステリー・ツアー_(曲)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > マジカル・ミステリー・ツアー_(曲)の意味・解説 

マジカル・ミステリー・ツアー (曲)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/04 14:59 UTC 版)

ビートルズ > 曲名リスト > マジカル・ミステリー・ツアー (曲)
マジカル・ミステリー・ツアー
ビートルズ楽曲
収録アルバム マジカル・ミステリー・ツアー
英語名 Magical Mystery Tour
リリース
  • 1967年11月27日 (LP)
  • 1967年12月8日 (EP)
録音
ジャンル サイケデリック・ポップ
時間 2分51秒
レーベル
作詞者 レノン=マッカートニー
作曲者 レノン=マッカートニー
プロデュース ジョージ・マーティン
マジカル・ミステリー・ツアー 収録曲
マジカル・ミステリー・ツアー
(A-1)
フール・オン・ザ・ヒル
(A-2)

マジカル・ミステリー・ツアー」(Magical Mystery Tour)は、ビートルズの楽曲である。1967年12月にBBC Oneで放送された同名のテレビ映画の主題歌(オープニングテーマ)で、同名のEP盤キャピトル編集盤の表題曲でもある。レノン=マッカートニー名義となっているが、主にポール・マッカートニーによって書かれた楽曲[1]。アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のレコーディング・セッションが終了した直後の1967年4月から5月にかけてレコーディングされた本作は、聴衆に対して不思議なミステリー・ツアーへの参加を呼びかける楽曲となっている。楽曲中には、4本のトランペットによるファンファーレが含まれている。

背景・曲の構成

「マジカル・ミステリー・ツアー」は、主にポール・マッカートニーによって書かれた楽曲。楽曲への貢献について、マッカートニーは「ジョンとの共作」とし[2]、ジョン・レノンは「僕も少し手伝ったけど、基本的にポールのアイデア」と語っている[3]。なお、レノンは1972年に「ポールが書いた。僕は少しだけ歌詞を手伝った」と語っている[4]

歌詞は映画を前提としたもので、1967年4月初めにアメリカを訪れたマッカートニーが「ビートルズが観光バスに乗り込んで旅行し、予測できない『マジカル』な冒険をするショート・フィルム」を制作することを考案[5]し、「主題歌を作る必要がある」と考えたことから本作が書かれた[6]。本作は映画のオープニングテーマとして使用されており、聴衆に対して不思議なミステリー・ツアーへの参加を呼びかける楽曲となっている。楽曲が制作された当時、ビートルズはLSDを服用していたことから、歌詞は薬物への明示的な言及と解釈されることもある[7][8]

マッカートニーは、本作の作詞にあたり、ビートルズのアシスタントで元ロード・マネージャーのマル・エヴァンズに、歌詞になりそうな言葉が掲載されたポスターを地元のバス停から探してくるように依頼した。最終的に理想的なポスターが見つからず、翌日にスタジオで行われたブレインストーミングを経て、歌詞が完成した[9]

レコーディング

「マジカル・ミステリー・ツアー」のレコーディングは、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のセッション最終日から1週間も経っていない1967年4月25日にEMIレコーディング・スタジオのスタジオ3で開始された。曲が未完成であったことから、その日の夕方はほとんどリハーサルに費やされた[10]。ベーシック・トラックは、マッカートニーのピアノ、レノンのアコースティック・ギタージョージ・ハリスンリードギターリンゴ・スターのドラムの編成で3回録音された[11]。その後ベーシック・トラックのリダクション・ミックスを作成する際に、ハリスンのギターと曲のコーダにおけるピアノにフランジャーがかけられた[12]

4月26日にマッカートニーのベースオーバー・ダビングされ、4人はエヴァンズやニール・アスピノールと共にマラカスタンバリンカウベル、追加のドラムなどのパーカッションを加えた[12]。その後にレノン、マッカートニー、ハリスンの3人で強く反響する叫び声を加えた[12]。翌日にマッカートニーのリード・ボーカルを加え、レノンとハリスンは「Roll up―Roll up for the Mystery Tour(さあさあ寄ってらっしゃい、ミステリー・ツアーの出発です)」というフレーズをはじめとしたバッキング・ボーカルを歌った[13]。バッキング・ボーカルは、テープの回転速度を遅くしてレコーディングしたため、通常の速度に戻すと声が高く聴こえるようになった[10]

5月3日にデイビッド・メイソン英語版エルガー・ハワースをはじめとしたトランペット奏者4名によるブラス・セクションが追加された[14][15]。レコーディングに参加した奏者の友人であるフィリップ・ジョーンズは、ハワースがブラス・セクションのスコアを書いたとしている[16]。また、コーダにはグロッケンシュピールもオーバー・ダビングされた[15]

音楽評論家のイアン・マクドナルド英語版は、レコーディングの進行の遅延について、ビートルズがLSDを服用していたことと、レノンとハリスンがマッカートニーが企画した映画に対して無関心であったことが原因であるとしている[1]。メンバーは、マネージャーのブライアン・エプスタインの死後、9月初旬に映画の撮影を行うことを決め、サウンドトラック用のレコーディング・セッションは、11月7日にマッカートニーが本作の冒頭に入っている客引きの台詞とバスの走行音を加えて終了となった[17]。バスの走行音のテープループ英語版は、M1モーターウェイを見下ろす高架橋で録音されたもの[10]で、単体でステレオ・ミックスであったためそのままミックスされた[18]

リリース

「マジカル・ミステリー・ツアー」は、1967年12月8日にイギリスで6曲入りの2枚組EP盤の表題曲として発売された[19]。なお、イギリスでの2枚組EPの発売は初の例となった[20][21]。アメリカでは既にEPの形態が廃れていたため、同年に発売されたシングル5曲を追加したLP盤として発売された。なお、このLP盤は2枚組EP盤に先行するかたちで11月27日に発売された[22]

12月26日にイギリスのBBC Oneでテレビ映画『マジカル・ミステリー・ツアー』が放送され、本作はオープニングテーマとして使用され[23]、映画のエンディングで使用されたリプライズ・バージョン[24]には、レノンによる別れの言葉が加えられた[15]。テレビ映画の評判は芳しいものではなかったが[25]、その一方でサウンドトラック盤については肯定的な評価を得た[11]。イギリスで発売された2枚組EP盤は、全英シングルチャートで最高位2位を獲得し、第1位にはシングル盤『ハロー・グッドバイ』がランクインした[26]

本作は、1973年に発売されたコンピレーション・アルバム『ザ・ビートルズ1967年〜1970年』や、1982年に発売されたコンピレーション・アルバム『リール・ミュージック』にも収録された[27]。なお、1987年以降のビートルズのアルバム作品のCD化の際には、アメリカで発売されたLP盤が採用された[28]

評価

メロディ・メイカー』誌のボブ・ドーバーンは、イギリスでシングルをステレオで発売するべき理由の一例として、EP『マジカル・ミステリー・ツアー』を挙げ、同作の表題曲にあたる「マジカル・ミステリー・ツアー」について「タムタムのビートの上で、ポールがリードを歌う大規模な荒らしのような作品。エフェクトは主にギターとブラスで構成され、最後にピアノへと引き継がれる」と評している[29]。『ヒット・パレーダー英語版』誌は、「ビートルズは、オープニング・ナンバーで魔法的なミステリー・ツアーに連れて行ってくれると宣言した。この曲はステレオで聴かなくてはならない」と書いている[30]

ニューヨーク・タイムズ』紙でリチャード・ゴールドスタイン英語版は、「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」と同様にスタジオの技術に依存して、モチーフに対して過度に焦点を合わせているとし、本作と「ユア・マザー・シュッド・ノウ」について「夕食後の会話のように退屈で息が詰まる」と評している[31]。『ステレオ・ヴィジョン英語版』誌のレックス・リード英語版は、本作およびアルバムに収録された楽曲について「からくりは音楽のアイデアを補うものではない」「『マジカル・ミステリー・ツアー』はラジオシティ・ミュージックホールのパロディに過ぎない」と評した[32]。音楽評論家のロバート・クリストガウは、『エスクァイア』誌で「ビートルズの新曲はテレビ映画の流れの中で聴くべき」とする一方で、タイトル曲を「がっかりする。場当たり的な曲」と評した[33]。また、1976年に『ザ・ヴィレッジ・ヴォイス』誌に寄稿したアルバムの回顧録で、「彼らの最悪の映画のダサいテーマ曲」と切り捨て、アメリカで発売されたLP盤における次曲「ザ・フール・オン・ザ・ヒル」とともに、リスナーに残りのサウンドトラックの質を見落とさせたと述べている[34]。音楽評論家のイアン・マクドナルド英語版は、「エネルギッシュではあるものの、結果的には作られたもので、その薄っぺらい発明は説得力に欠ける時間とテンポの変化で騙された歪んだプロダクションによって隠されている」「メインとなるアイデアは古くさく、その対照的なセクションは『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ』のヴァースの順序を置き換えただけ」と評している[35]

2002年の『モジョ』誌にレビューを寄稿したチャールズ・シャー・マリー英語版は、本作を称賛しており、「(マッカートニーの)最も豊かで『鳴り響く』リード・ボーカルと、レノンのフィルターをかけた『けたたましい』バッキング・パートが、イギリスで最も特徴的な2種類のロック・ヴォイスの非常に刺激的な並置の1つとなっている」「この曲が未知でありながら穏やかな未来を歓迎する熱意と興奮は、『宇宙大作戦』に影響を与えた60年代の典型的なビジョンを表している」と述べている[36]

クレジット

※出典[37][11]

ビートルズ
外部ミュージシャン

カバー・バージョン

アンブロージアは、1976年に公開されたドキュメンタリー映画『All This and World War II』のサウンドトラックとしてカバーした。アンブロージアによるカバー・バージョンは、アメリカでシングル盤としても発売され、Billboard Hot 100で最高位39位を獲得した[39]。この他にも、チープ・トリックBONNIE PINKイングヴェイ・マルムスティーン、エディ・ウェダーらによってカバーされた[40]

ビータリカは、2007年にアルバム『Masterful Mystery Tour』に、メタリカの楽曲「Master of Puppets」とマッシュアップした「Masterful Mystery Tour」という楽曲を収録した。

マッカートニーは、1993年の「New World」ツアーで本作を演奏した。当時のライブ音源は、ライブ・アルバム『ポール・イズ・ライブ』に収録された[40]

脚注

出典

  1. ^ a b MacDonald 1998, pp. 222–224.
  2. ^ Miles 1997, pp. 352–353.
  3. ^ Womack 2014, p. 595.
  4. ^ Smith, Alan (February 1972). “Lennon/McCartney Singalong: Who Wrote What”. Hit Parader. https://archive.org/details/JohnLennonInterview1972HitParaderMagazine. 
  5. ^ Stark 2005, p. 218.
  6. ^ Lewisohn 2005, pp. 109–110.
  7. ^ Campbell, Michael; Brody, James (2007). Rock and roll: an introduction. Schirmer Books. p. 171. ISBN 0-534-64295-0 
  8. ^ The Beatles (Unseen Archives). Parragon Plus. (2003). p. 193. ISBN 1-4054-0716-6 
  9. ^ Winn 2009, p. 103.
  10. ^ a b c Lewisohn 2005, p. 110.
  11. ^ a b c Everett 1999, p. 132.
  12. ^ a b c Guesdon & Margotin 2013, p. 424.
  13. ^ Winn 2009, pp. 103–104.
  14. ^ MacDonald 1998, pp. 222, 223.
  15. ^ a b c Winn 2009, p. 104.
  16. ^ Lewisohn 2005, p. 111.
  17. ^ Lewisohn 2005, p. 130.
  18. ^ Everett 1999, pp. 132–133.
  19. ^ Castleman & Podrazik 1976, p. 64.
  20. ^ Neaverson 1997, p. 53.
  21. ^ Larkin 2006, p. 488.
  22. ^ Castleman & Podrazik 1976, p. 63.
  23. ^ Ingham 2006, p. 45.
  24. ^ Winn 2009, pp. 104–105.
  25. ^ Frontani 2007, pp. 161–162.
  26. ^ Official Singles Chart Top 50”. Official Charts Company (1968年1月17日). 2020年9月29日閲覧。
  27. ^ Womack 2014, p. 596.
  28. ^ Lewisohn 2005, p. 200.
  29. ^ Dawbarn, Bob (25 November 1967). “Magical Beatles – in Stereo”. Melody Maker: 17. 
  30. ^ Staff writer (April 1968). “Platter Chatter: Albums from The Beatles, Rolling Stones, Jefferson Airplane, Cream and Kaleidoscope”. Hit Parader. http://www.rocksbackpages.com/Library/Article/platter-chatter-albums-from-the-beatles-rolling-stones-jefferson-airplane-cream-and-kaleidoscope. 
  31. ^ Goldstein, Richard (1967年12月31日). “Are the Beatles Waning?”. The New York Times: p. 62 
  32. ^ Reed, Rex (March 1968). “Entertainment (The Beatles "Magical Mystery Tour")”. HiFi/Stereo Review: 117. https://www.americanradiohistory.com/hd2/IDX-Audio/Archive-Stereo-Review-IDX/IDX/60s/HiFi-Stereo-Review-1968-03-OCR-Page-0113.pdf. 
  33. ^ Christgau, Robert (May 1968). “Columns”. Esquire. http://www.robertchristgau.com/xg/bk-aow/column3.php. 
  34. ^ Christgau, Robert (1976年12月20日). “Christgau's Consumer Guide to 1967”. The Village Voice: p. 69 
  35. ^ MacDonald 1998, p. 223.
  36. ^ Shaar Murray, Charles (2002). “Magical Mystery Tour: All Aboard the Magic Bus”. Mojo Special Limited Edition: 1000 Days That Shook the World (The Psychedelic Beatles – April 1, 1965 to December 26, 1967). London: Emap. pp. 129-130 
  37. ^ Lewisohn 2005, pp. 110–111.
  38. ^ MacDonald 1998, p. 222.
  39. ^ The Hot 100 Chart”. Billboard (1977年4月2日). 2020年9月29日閲覧。
  40. ^ a b Fontenot, Robert. “The Beatles Songs: 'Magical Mystery Tour' – The history of this classic Beatles song”. oldies.about.com. 2013年1月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月29日閲覧。

参考文献

外部リンク


「マジカル・ミステリー・ツアー (曲)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「マジカル・ミステリー・ツアー_(曲)」の関連用語

マジカル・ミステリー・ツアー_(曲)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



マジカル・ミステリー・ツアー_(曲)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのマジカル・ミステリー・ツアー (曲) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS