ホーキングの量子宇宙論
研究者たちを苦しめる、宇宙の「始まり」と「終わり」
宇宙理論の研究で、研究者たちをもっとも苦しめるのが、宇宙の始まりの瞬間、あるいは消滅の瞬間という「特異点(とくいてん)」の問題です。ビッグバンの瞬間のような、無限大の密度、無限大の温度、無限大の重力かつ無限小の質量という特異点では、一般相対性理論をはじめあらゆる物理法則が破綻(はたん)してしまいます。
「特異点」問題を解決する「無境界境界条件」
このような特異点を回避するために、イギリスのスティーブン・ホーキング(1942年〜)らが「無境界境界条件」という考え方を提唱しています。これは一般相対性理論に量子力学の考え方を取り入れたもので、宇宙には特異点――始まりや終わりを特定する必要がないとするものです。ホーキングは量子論から「虚時間(きょじかん)=存在しない時間」という概念を得て、確率的な計算で宇宙モデルを描き出しました。かんたんにいうと、宇宙は実時間の時空と虚時間の時空を交互にたどり、実時間時空での消滅は、虚時間時空での誕生というように、誕生と消滅をくり返すというイメージです。もちろんこれも理論上の宇宙モデルの1つですが、一般相対性理論と量子力学を統一する「量子宇宙論」の試みとして評価されています。
- ホーキングの量子宇宙論のページへのリンク