ベックマン転位
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/19 23:53 UTC 版)
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ベックマン転位(ベックマンてんい、Beckmann rearrangement)は、ケトンから作られたオキシムからN-置換アミドが得られる転位反応のことである。
エルンスト・オットー・ベックマンによって1886年に報告された。

反応機構
まず窒素上からのヒドロキシ基の脱離と同時にイミノ基の炭素に置換している2つのアルキル基のうちの一つが窒素上に転位してアルキルジンアンモニウム塩となる。 これに脱離した水が付加してN-置換イミド酸となった後、互変異性によりN-置換アミドに異性化する。
転位で移動するアルキル基はヒドロキシ基に対してantiに位置する基であるが、酸性条件下で行なう場合はオキシムのsyn-anti異性化が容易に起こるため、もとのオキシムの幾何配置に関係なく転位しやすい方のアルキル基が転位を起こす。 転位のしやすさはπ電子を持つアリール基やアルケニル基がもっとも転位しやすく、第三級アルキル、第二級アルキル、第一級アルキルの順に転位しにくくなる。
環状ケトンのオキシムに対してこの反応を行なうと、もとのケトンのカルボニル基の隣りにNHを挿入して、1つ環員数の大きいラクタムを合成する反応となる。 この反応はシクロヘキサノンから6-ナイロンの原料となるε-カプロラクタムを得る工業的な合成法として重要である。
濃硫酸、五塩化リンや塩化チオニル、ポリリン酸などが反応の添加剤として使用される。 これらはいずれもヒドロキシ基を脱離しやすい基に変換する役割を果たしている。 脱離基となるオキシムのヒドロキシ基を前もってスルホン酸エステルやトリフルオロ酢酸エステルへと変換して脱離しやすくすると、加熱するだけで反応が進行するので酸性に弱い基質にも適用可能となる。 また、オキシムから直接中性条件で反応を行なう系としてカルボニルジイミダゾールとハロゲン化アルキルを使用する方法が知られている。
また、添加剤を触媒量ですむように改良した方法の研究も盛んである。 塩化シアヌルを使用する系、トリフルオロメタンスルホン酸とロジウムやレニウムの遷移金属触媒を使用する系、モンモリロナイトやゼオライトなどの固体酸を使用する系などが報告されている。
通常、アルデヒドのオキシムに対してこの反応の条件を適用すると単に脱水反応が起こってニトリルが生成する。 しかし、芳香族アルデヒドをヒドロキシルアミン塩酸塩と酸化亜鉛とともに加熱すると芳香族カルボン酸アミドが得られるという反応が知られている。
ベックマン転移
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/27 02:18 UTC 版)
「ε-カプロラクタム」の記事における「ベックマン転移」の解説
シクロヘキサノンオキシムのベックマン転移は、発煙硫酸によって行われていた。この方法は、反応に使用した硫酸をアンモニアで中和するためカプロラクタム 1トンあたり約 1.7 トンの硫酸アンモニウムを副生する。 発煙硫酸を使用しない方法として、ハイシリカMFIゼオライト触媒を用いて気相ベックマン転位を行うことで、目的物のカプロラクタムが得る方法が住友化学により開発された。全く硫酸アンモニウムを副生しない触媒的な合成法として、高く評価されている。本法は2003年に住友化学により工業化され、また気相ベックマン転位法に関し、2003年度グリーン・サステイナブル ケミストリー(GSC)賞経済産業大臣賞を受賞した。なお、ハイシリカゼオライトは名前の通り、アルミナをほとんど含まず、酸点をほとんど有していない。またアルミナの比率が高いゼオライトは、本反応にあまり有効ではない。従って、その酸触媒作用機構には興味が持たれている。 発煙硫酸を使用しない方法として、塩化シアヌル触媒によりベックマン転移させてカプロラクタムを得る方法が開発されている方法も開発された。従来は有害な塩化ニトロシルを使う必要があり、生成したシクロヘキサノンオキシムも塩酸塩となってしまって効率が悪いという問題点があったが、この方法では硫酸アンモニウムなどの不要な廃棄物がほとんど発生しないうえ、シクロヘキサンをからシクロヘキサノンオキシムとしさらにベックマン転移までワンポット合成であるため全収率は約75%に達する。
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