ピンポイント・サイテーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/08 18:25 UTC 版)
「判例引用」の記事における「ピンポイント・サイテーション」の解説
実務上、ほとんどの法律家は、上記の引用方式に従った上で、さらに判例の特定を行っている。裁判所の判断は、たいてい複数の論点についての意見を含んでいる。そのため、法律家は、自分が担当する事件との関係で用いる必要がある特定の意見が記載された頁数を特定して引用する必要がある。このような引用方法を、「ピンポイント・サイテーション」(「pin cites」、「jump cites」)という。 Roe v. Wade事件を例にとると、合衆国最高裁判所は、修正第14条における「person」(人)には胎児は含まれないと判示した。これが言及されているのは、判例集の158頁である。ピンポイント・サイテーション方式により引用すると、次のようになる。 Roe v. Wade, 410 U.S. 113, 158 (1973) そして、合衆国判例集に加えて他の判例集2つについてパラレル・サイテーション方式で引用し、ピンポイント・サイテーションで特定すると、次のようになる。 Roe v. Wade, 410 U.S. 113, 158, 93 S. Ct. 705, 729, 35 L. Ed. 2d 147, 180 (1973). しかし、裁判所は、公式判例集についてのみ、意見においてピンポイント・サイテーション方式による引用を行っている。他の2つの非公式判例集については、裁判所の意見を掲載するにあたり、パラレル・サイテーションで他の判例集の引用は行うが、特定の頁をピンポイントで引用することはしていない。そのため、レクシスネクシスやウェストローで、Roe v. Wade 事件を意見中に引用した後の最高裁判所の裁判をみると、次のような形で引用が行われている。 Roe v. Wade, 410 U.S. 113, 158, 93 S. Ct. 705, 35 L. Ed. 2d 147 (1973). しかし、このような形式による引用は相当な長さになり、一見したところ意味が分からず、法学を専門としていない素人にとって、裁判所の意見を読もうとする場合の障害となっている。1980年代から、アメリカの裁判官の間で、このような長い引用は脚注に落とし、裁判所の意見の可読性を高めるべきではないかとの議論がなされている。この議論は、法律文書のスタイルに関する文献の指導的な著者であるブライアン・ガーナーの強力な主導の下で行われている。ほとんどの裁判官は、「いくつかの」引用については脚注に落としているが、最高裁判所判事のスティーブン・ブライヤー判事と(第7巡回区連邦控訴裁判所)裁判官リチャード・アレン・ポズナーが、自己の意見における脚注の使用を拒否していることはよく知られている。
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