バルデス半島とは? わかりやすく解説

バルデス‐はんとう〔‐ハンタウ〕【バルデス半島】

読み方:ばるですはんとう

Península Valdés》アルゼンチン南部チュブト州東岸にある、大西洋突き出す半島ミナミゾウアザラシミナミセミクジラ繁殖地として知られ1999年、「バルデス半島」の名で世界遺産自然遺産)に登録された。

バルデス半島の画像
撮影・BrianMKA http://goo.gl/UW6hz

バルデス半島

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/16 17:00 UTC 版)

バルデス半島
アルゼンチン
バルデス半島のオタリアたち
英名 Península Valdés
仏名 Presqu'île de Valdés
面積 3600km 2
登録区分 自然遺産
IUCN分類 II, IV, VI
登録基準 (10)
登録年 1999年(ID937)
公式サイト 世界遺産センター(英語)
地図
使用方法表示

バルデス半島アルゼンチンチュブ州にある半島で、大西洋アルゼンチン海に面し、地峡カルロス・アメギノ地峡スペイン語版南アメリカ大陸本土とつながっている。特色ある動物相で知られる、長方形にも見える形をした半島である。面積は約3625km2であり、かなりの部分がユネスコ世界遺産に登録されている(ID937)。最寄の街はプエルト・マドリン英語版である。

地理

バルデス半島の衛星写真

半島の北部にはサン・マティアス湾英語版が、南部にはヌエボ湾英語版がそれぞれあり、この二つが半島の主要な湾である。北側には陸地に大きく入り込むサン・ホセ湾スペイン語版がある、側にはより小さい入り江であるバルデス湾スペイン語版もある。半島には塩湖が複数あり、しかもその最大のものは海抜よりも40mも低い。これは、南アメリカ大陸の陸地では屈指の低さである。

一帯の気候は冷涼である。また、アンデス山脈にさえぎられていることから雨が少なく、乾燥している。その一方で、この半島は海から様々な恩恵を受けており、後述するような動物相の形成にも影響している。

歴史的には、この地域で暮らしてきたのはテウェルチェ人である。そのことは、彼らが加工して使っていたが穿った点穴を至る所で見られることからも明らかである。

動物相・植物相

ミナミセミクジラホエールウォッチング

気候の特色に加え、塩湖が多い地形のせいで乾燥した温帯草原ステップ)の植生は発達しており、植物はまばらであるが、アブラナ科サボテン科マメ科モクセイ科クマツヅラ科の多くの固有種が生えている[1]

これに対し、海棲動物の種類は多様である。そのため、チュブ州は一帯の陸地、空域、周辺3海里の海域を「バルデス半島自然保護区」(Área Natural Protegida Península Valdés)として保護している。2012年にラムサール条約登録地となり[2]、2014年にヌエボ湾沿岸のエル・ドラディージョ浜スペイン語版ロマ岬スペイン語版レオン岬スペイン語版を含む一帯はユネスコの生物圏保護区に指定された[1]

一見すると環境は不毛で陰鬱なようであるが、海岸線は多くの動物たちをひきつけており、それが観光客のみでなく専門家たちも驚嘆させてやまない優れた生態系を作り上げているのである。

海生哺乳類

イロワケイルカ
バルデス半島の景観とミナミゾウアザラシ

保護計画により、ミナミセミクジラの生息数もゆっくりとではあるが回復傾向にあることが確認されている。ヌエボ湾とサン・ホセ湾には5月から12月に訪れ、外洋よりも静穏で暖かい湾内で生殖行為や出産を行うのである。その時期に、メスの鯨に気に入ってもらおうとして、オスたちが繰り広げる求愛のパレードを見ることが出来るので、ホエールウォッチングは重要な観光事業のひとつになっている。ここバルデス半島は、捕鯨により激減したミナミセミクジラの回復がいち早く知られ、現在に至るまで最も重要な繁殖地の一つとなっている。

ミナミセミクジラ以外にも鯨類は見られ、ハラジロカマイルカイロワケイルカラプラタカワイルカ(見られるのは稀)などの小型種の他に、世界でもここのみで確認されている、砂浜に突進、乗り上げてオタリアを捕食するシャチの個体群などが知られている。

バルデス半島では他にも、ミナミゾウアザラシハレムを形成するオタリアなどが見られる。

鳥類

マゼランペンギン

66種の渡り鳥を含む181種の鳥類が確認されており、チリーフラミンゴマゼランペンギンダーウィンレアミナミオオセグロカモメコオバシギミユビシギヒメウズラシギコシジロウズラシギアメリカミヤコドリコフタオビチドリ英語版ミナミユリカモメナンベイアジサシ英語版サンドイッチアジサシアメリカオオアジサシ英語版カンムリガモ英語版アルゼンチンフナガモ英語版サヤハシチドリなどが見られる[2][3]

陸棲動物

グアナコ
バルデス半島のピチアルマジロ

グアナコチコハイイロギツネマーラ(固有種)、ピチアルマジロスカンクなどが生息している。

世界遺産

バルデス半島は、ミナミセミクジラやミナミゾウアザラシの重要な繁殖地となっていることなど、特にその海岸や沿岸部の動物相の豊かさや重要性が評価され、1999年に自然遺産として登録された。

登録基準

この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。

  • (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

IUCNカテゴリー

IUCNによる登録物件のカテゴリーの内訳は、次の通りである。

  • II(州立公園)
    • サン・ホセ湾海洋公園(Golfo San José Marine Park)
  • IV(種と生息地管理地域)
    • プンタ・ノルテスペイン語版観光自然保護区(Punta Norte Touristic Nature Reserve)
    • パハロス島スペイン語版観光自然保護区(Isla de los Pájaros Touristic Nature Reserve)
    • プンタ・ピラミデスペイン語版観光自然保護区(Punta Pirámide Touristic Nature Reserve)
    • バルデス湾観光自然保護区(Caleta Valdés Touristic Nature Reserve)
    • プンタ・デルガダ英語版観光自然保護区(Punta Delgada Touristic Nature Reserve)
  • VI(資源保護地域)
    • バルデス半島完全対象観光自然保護区(Península Valdés Integral Objective Touristic Nature Reserve)

脚注

  1. ^ a b Valdes Biosphere Reserve, Argentina” (英語). UNESCO (2018年10月22日). 2023年3月28日閲覧。
  2. ^ a b Humedales de Península Valdés | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2012年7月20日). 2023年3月28日閲覧。
  3. ^ Península Valdés” (英語). UNESCO World Heritage Centre. 2023年5月2日閲覧。

外部リンク

座標: 南緯42度30分 西経63度56分 / 南緯42.500度 西経63.933度 / -42.500; -63.933




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