トサツツガムシの発見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/04 15:15 UTC 版)
「土佐のほっぱん」の記事における「トサツツガムシの発見」の解説
翌朝6月30日、仕掛けられた複数の罠のうち集落内と畑のものからドブネズミ3頭、裏山からアカネズミ1頭、および調査の目的を知り賛同した伊田地区の有志によって生け捕りにされた3頭のドブネズミが捕獲された。これらのネズミがリケッチアを保有するツツガムシに寄生されているか否か、この段階では確認できていないが、リケッチアは極めて危険な病原体であり、過去の日本国内におけるツツガムシ病研究では、研究施設内でのリケッチア感染により研究者が殉職する事故が数件発生していた。万一のため、ネズミの取扱には細心の注意が払われた。 捕獲したネズミを慎重に調べると、うすピンク色のツツガムシが数匹、ドブネズミの耳の中に吸い付いているのが肉眼で確認できた。佐々たちは驚きの歓声を上げるが、伊田地区の人たちはネズミの耳についたダニの意味するところが分からず、キツネにつままれたような表情であったという。こうして捕獲されたネズミのうち、合計6頭のドブネズミから合わせて112匹のツツガムシが採取された。 ところが持参した顕微鏡でこのツツガムシを調べると、佐々をはじめ同行した県医師会、高知大学の専門家たちも初めて目にするツツガムシであった。その後の調べにより、これまで日本で報告されたことのない、新種のツツガムシであると判明し、佐々により、トサツツガムシ(学名:Leptotrombidium tosa)と命名された 。 新種のツツガムシを発見したものの、このツツガムシがリケッチアを保有していなければ単なるダニである。ツツガムシ病(ここでは「ほっぱん」)の媒介者であることを証明するには、このツツガムシがリケッチアを持っていることが確認されなければならない。しかしリケッチア保有の有無の確認には研究施設等での詳細な検証検査が必要とされる。したがって現場での検証は困難であり、まして即日に検証結果を出すことは不可能である。 佐々はトサツツガムシに寄生されたドブネズミを現地で解剖し、その脾臓をつぶして東京から持参したマウスに注射した。こうして伊田地区での調査は終了し、佐々は発見したトサツツガムシの幼虫、実験用マウスなどのサンプルを持って東京へ戻った。
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