テンソル構造の決定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 04:29 UTC 版)
「フェルミ相互作用」の記事における「テンソル構造の決定」の解説
フェルミによる本来の理論では、2つのベクトルカレントが接触して結合する相互作用を仮定していた。この仮定では、粒子の持つパリティは常に保存している。その後、1956年に李政道と楊振寧はK中間子の崩壊についての研究から、弱い相互作用ではパリティ対称性の破れが起きていることを予想した。パリティ対称性の破れは、1957年に呉健雄らによって行われた偏極したコバルト60原子核のベータ崩壊を測定する実験で初めて確認された。これにより、弱い相互作用による現象においてパリティが常に保存するフェルミの理論には、パリティ対称性を破るような修正が必要であることが分かった。 さらに、中性子のベータ崩壊にはフェルミ遷移(放出される電子とニュートリノのスピンが反平行)とガモフ=テラー遷移(放出される電子とニュートリノのスピンが平行)という2種類の遷移が知られており、ベータ崩壊についての理論は2種類両方の遷移を正しく記述できなければならない。フェルミの理論ではベクトルカレントのみの相互作用が考えられており、この方法ではフェルミ遷移しか記述できなかった。 フェルミによる本来の理論だけでは、ガモフ=テラー遷移やパリティ対称性の破れを再現することができなかったため、ジョージ・スダルシャンとロバート・マーシャク、及び、リチャード・ファインマンとマレー・ゲルマンはそれぞれ独立に、軸性ベクトルカレントを導入し、ベータ崩壊に対する4-フェルミ粒子相互作用の正しいテンソル構造(V-A相互作用)を決定した。
※この「テンソル構造の決定」の解説は、「フェルミ相互作用」の解説の一部です。
「テンソル構造の決定」を含む「フェルミ相互作用」の記事については、「フェルミ相互作用」の概要を参照ください。
- テンソル構造の決定のページへのリンク