ツェーリング家

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ツェーリンゲン家

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2024/02/25 06:03 UTC 版)

ツェーリンゲン家の紋章

ツェーリンゲン家（ツェーリンゲンけ、ドイツ語: Zähringer）は、ドイツの貴族の家系の1つ。現在のシュヴァーベン地方、バーデン＝ヴュルテンベルク州とスイスを治めていた。11世紀にシュヴァーベン系とバーデン系に分かれ、シュヴァーベン系は中世に断絶し、バーデン系が引き継いだ。家名はフライブルク・イム・ブライスガウのツェーリンゲン城にちなんで名付けられた。

歴史

家祖は962年にブライスガウ伯として登場したベルトルト1世（982年没）で、祖先はアラマンニ人の有力貴族と言われている。ヘルマン6世などオーストリア公となった人物も出たが、オーストリア公国の領有権を三代で失っている。

ベルトルト1世の曾孫のベルトルト1世は神聖ローマ皇帝ハインリヒ3世にシュヴァーベンの授封を約束されていた。しかし、ハインリヒ3世が亡くなると未亡人アグネスは約束を反故にしてルドルフ・フォン・ラインフェルデンをシュヴァーベン大公に封じた。ベルトルト1世には代わりにケルンテン公国とヴェローナを与えられたが、名ばかりの授封に反発した次男のベルトルト2世はハインリヒ4世と教皇グレゴリウス7世が叙任権闘争で争うと教皇派として対立王となったルドルフと共にハインリヒ4世と戦った。なお、長男のヘルマン1世は1074年（1073年とも）にヴェローナ辺境伯に任命されたが同年に急死、息子のヘルマン2世がバーデンを相続、子孫はバーデン辺境伯として続いた。

ベルトルト2世はルドルフが1080年に亡くなった後もその息子で妻の兄にあたるベルトルト・フォン・ラインフェルデンと共にホーエンシュタウフェン家出身でハインリヒ4世の婿のフリードリヒ1世と大公位を巡って争い、1090年に義兄が死んでラインフェルデン家が断絶すると遺領を受け継いでシュヴァーベン大公を称し、1098年にマインツの和で和睦するまで戦いを継続した。和睦の結果、フリードリヒ1世がシュヴァーベン大公となり、ベルトルト2世は代わりにツェーリンゲン公として大公位を保持、ブライスガウ周辺の勢力を保った。

1127年、ベルトルトの次男コンラート1世は甥にあたるブルゴーニュ伯ギヨーム3世が暗殺されたことで継承権を主張し、ルノー3世と争ってブルゴーニュ東部を獲得、神聖ローマ皇帝ロタール3世からブルグント総監（皇帝代理職）を与えられ、ブルグント王国の旧領に当たるスイスに所領を拡大した。この措置はロタール3世の対シュタウフェン家政策の一環とされる。シュヴァーベン系はスイスの発展に尽くしフリブール、ベルンなどの都市を築き、チューリヒの整備も行った。しかし、1218年にコンラート1世の孫のベルトルト5世が子の無いまま死去、シュヴァーベン系は断絶し、姻戚関係からキーブルク家が遺領を継承し、さらにキーブルク家と姻戚関係にあるハプスブルク家に渡り同家の興隆の基礎となった。コンラート1世の息子の1人アーダルベルト1世はテック公を称したが、この家系も1439年に断絶し、領土はヴュルテンベルク家に売却された。

バーデン系は1112年にヘルマン2世がバーデン辺境伯となって以降、神聖ローマ帝国の領邦として存続、分割相続で幾度も分裂と合邦を繰り返したが、1771年にバーデン＝ドゥルラハ辺境伯カール・フリードリヒが所領を統一、バーデン辺境伯となり、1803年に選帝侯に昇格、1806年に神聖ローマ帝国が解体すると大公となり、バーデン大公国と改められた。以後バーデン大公国はドイツ連邦への加盟を経て1871年にドイツ帝国の構成国となり、1918年のドイツ革命まで存続した。

歴代ツェーリンゲン公

括弧内は在位年。

• ベルトルト2世（1100年 - 1111年）
• ベルトルト3世（1111年 - 1122年）
• コンラート1世（1122年 - 1152年）
• ベルトルト4世（1152年 - 1186年）
• ベルトルト5世（1186年 - 1218年）

系図

ツェーリンゲン公、バーデン辺境伯～バーデン大公

•   ツェーリンゲン公
•   テック公
•   バーデン辺境伯
•   バーデン＝バーデン辺境伯
•   バーデン＝デュルラハ辺境伯
•   バーデン大公

ベルトルト1世 ブライスガウ伯

ベルトルト

ベルトルト1世 ケルンテン公 ヴェローナ辺境伯

ヘルマン1世 ヴェローナ辺境伯

ベルトルト2世 シュヴァーベン対立大公

アグネス （シュヴァーベン公ルドルフ・フォン・ラインフェルデン娘）

ゲプハルト3世 コンスタンツ司教 (1110年没)

ヘルマン2世

ゾフィー （バイエルン公ハインリヒ9世娘）

ベルトルト3世

コンラート1世 ブルグント総監

クレメンティア （ルクセンブルク伯ハインリヒ4世妹）

リウトガルト ＝ライン宮中伯ゴットフリート・フォン・カルフ

アグネス ＝ブルゴーニュ伯ギヨーム2世

ヘルマン3世

ハイルヴィヒ ・フォン・フローブルク

ベルトルト4世 ブルグント総監

イド ブローニュ女伯

ルドルフ マインツ大司教 リエージュ司教

アーダルベルト1世

フーゴ ウルムブルク公

クレメンティア ＝ハインリヒ獅子公

ヘルマン4世

ベルトルト5世 ブルグント総監

アグネス (?-1239) =ウラッハ伯エゲノ4世

アンナ

ウルリヒ3世 キーブルク伯

アーダルベルト2世

イルムガルド （ライン宮中伯ハインリヒ5世娘）

ヘルマン5世

フリードリヒ

ハインリヒ1世 ハッハベルク辺境伯

フライブルク伯家

キーブルク伯家

コンラート1世

ゲルトルート （バーベンベルク家ハインリヒ娘）

ヘルマン6世 オーストリア公 シュタイアーマルク公

ルドルフ1世

ハッハベルク辺境伯家 ザウゼンベルク辺境伯家

ルートヴィヒ1世

コンラート2世

フリードリヒ1世

ヘルマン7世

ルドルフ2世

ヘッソ

ルドルフ3世

イルムガルト ＝ヴュルテンベルク伯エーバーハルト2世

ルートヴィヒ2世

ヘルマン2世

シモン1世

フリードリヒ2世

ルドルフ4世

ヘルマン8世

ヘルマン

ルドルフ・ヘッソ

ルートヴィヒ4世

シモン2世

コンラート4世

ヘルマン9世

フリードリヒ3世

ルドルフ5世 プフォルツハイム辺境伯

フリードリヒ4世

フリードリヒ4世 (1353年以前没)

ルドルフ6世

コンラート5世

ウルリヒ

ベルンハルト1世

ルドルフ7世

メヒティルト ＝ヘンネベルク伯ハインリヒ

カトリーヌ （ロレーヌ公シャルル2世娘）

ヤーコプ1世

ベルンハルト

カタリーナ （オーストリア公エルンスト娘）

カール1世

ベルンハルト2世

ヨハン トリーア大司教

ゲオルク メッツ司教

マルクス

クリストフ1世

アルブレヒト ハッハベルク辺境伯

フリードリヒ ユトレヒト司教

ベルンハルト3世

フィリップ1世 シュポンハイム辺境伯

エリーザベト （プファルツ選帝侯フィリップ娘）

エルンスト

フィリベルト

クリストフ2世 ローデマヒェルン辺境伯

マリア・ヤコベア ＝バイエルン公ヴィルヘルム4世

ベルンハルト

カール2世

アンナ （プファルツ＝フェルデンツ公ループレヒト娘）

フィリップ2世

エドゥアルト・フォルトゥナート

フィリップ3世 ローデマヒェルン辺境伯

エルンスト・フリードリヒ

ヤーコプ3世

ゲオルク・フリードリヒ

ヴィルヘルム

カタリーナ （ホーエンツォレルン＝ヘヒンゲン侯ヨハン・ゲオルク娘）

ヘルマン・フォルトゥナート ローデマヒェルン辺境伯

バルバラ （ヴュルテンベルク公フリードリヒ1世娘）

フリードリヒ5世

カール

クリストフ (1632年没)

フェルディナント・マクシミリアン

カール・ヴィルヘルム (1666年没)

クリスティーナ （プファルツ＝クレーブルク公ヨハン・カジミール娘）

フリードリヒ6世

カール・マグヌス

ルートヴィヒ・ヴィルヘルム

アウグスタ （ゴットルプ公フレゼリク3世娘）

フリードリヒ7世

カール・グスタフ (1703年没)

カール・フリードリヒ (1676年没)

ルートヴィヒ・ゲオルク

アウグスト・ゲオルク

カール3世ヴィルヘルム

クリストフ (1723年没)

アルベルティーナ・フリーデリケ ＝ゴットルプ公クリスティアン・アウグスト

カール・アントン (1692年没)

カール

ルートヴィヒ・ゲオルク

フリードリヒ

カール・アウグスト (1786年没)

カール・ヴィルヘルム

クリストフ (1789年没)

カール・フリードリヒ

カール・ルートヴィヒ

ルートヴィヒ1世

レオポルト

カール

ルートヴィヒ2世

フリードリヒ1世

ヴィルヘルム

フリードリヒ2世

ルートヴィヒ

マクシミリアン 帝国宰相

ベルトルト

マクシミリアン

ルートヴィヒ

ハッハベルク辺境伯、ザウゼンベルク辺境伯

ハインリヒ1世 (1231年没) ハッハベルク辺境伯

ハインリヒ2世 (1297/8年没)

ハインリヒ3世 (1330年没) ハッハベルク辺境伯

ルドルフ1世 (1314年以前没) ザウゼンベルク辺境伯

ハインリヒ4世 (1369年没) ハッハベルク辺境伯

ルドルフ2世 (1352/6年没) ザウゼンベルク辺境伯

オットー1世 (1386年没) ハッハベルク辺境伯

ヘッソ1世 (1410年没) ハッハベルク辺境伯

ルドルフ3世 (1428年没) ザウゼンベルク辺境伯

オットー2世 (1418年没) ハッハベルク辺境伯

フェレナ ＝ハインリヒ5世・フォン・フュルステンベルク

ヴィルヘルム (1473年以降没) ザウゼンベルク辺境伯

ルドルフ4世 (1487年没) ザウゼンベルク辺境伯

ヒューゴ (1445年没)

フィリップ (1503年没) ザウゼンベルク辺境伯

ヨハンナ

ルイ1世 ロングヴィル公

オルレアン＝ロングヴィル家

ハッハベルク辺境伯オットー2世はハッハベルクをバーデン辺境伯ベルンハルト1世に売却

関連項目

• スイスの歴史
• オーストリア君主一覧
• ブルグント王の一覧
• バーデン (領邦)
• ヘルマン5世 (バーデン＝バーデン辺境伯)
• ヘルマン6世 (バーデン＝バーデン辺境伯)
• ルドルフ1世 (バーデン＝バーデン辺境伯)
• フリードリヒ1世 (バーデン＝バーデン辺境伯)

参考文献

• 森田安一 編 『新版 世界各国史14 スイス・ベネルクス史』 山川出版社、1998年
• 下津清太郎 編 『世界帝王系図集 増補版』 近藤出版社、1982年
• Jiří Louda, Michael Maclagan, Lines of Succession, Little, Brown & Company, 1981.
• Max Miller, Gerhard Taddey, Handbuch der historischen Stätten: Baden-Württemberg, Alfred Kröner Verlag, 1980.