スパコンでの利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/10 06:45 UTC 版)
スーパーコンピュータの冷却用として、空冷では不十分な状況や、強制的なポンプでの送風が制限される状況下で使用されることで知られる。1980年代に開発されたスパコンでよく使われ、特に1985年に発売されたCray-2は、フロリナートによる浸漬液冷が史上初めて本格的に利用されたスパコンとして、ハードウェア一式がフロリナートに満たされた水槽の中に沈んでいる公開写真のインパクトでも話題となった。1980年代当時にスパコン用のLSIとして使われていたECLが非常に発熱量が多かったのも一因である。 しかし、フロリナートの水槽に漬けられるのはプリント基板のみで、HDDやファンなどの物理的に稼働する部品が有るものは浸けられない、また一部のプラスチック部品もフロリナートに溶けてしまうので漬けられない、という点に加えて、フロリナートの価格の高さ、誤って吸入した際の人体への毒性(フロリナート自体の安全性は高いと考えられているが、200度以上に加熱された場合にペルフルオロイソブテンやフッ化水素が発生する恐れがある)、開放式システムの場合はフロリナートが蒸発して減っていく、などの運用の難しさと(フロリナートが蒸発しない密閉式も存在するが、保守が面倒になる)、極めて高い温暖化効果を持ち地球環境に悪影響を与えることなどから、1990年代以降にスパコン用LSIの主流がECLと比べて発熱量が少ないCMOSになるに従い、ファンを使った空冷が再び主流となった。 スパコンの浸漬液冷用の冷却材としては、フロリナートの代わりに安価で安全性も高い鉱油(車のエンジンオイルなどに使われる物と同種のもの)を使った物も存在するが、フロリナートは鉱油と違って粘性が少なく、保守がしやすいことと(フロリナートは水槽から引き揚げた際にパーツから大部分が流れ落ち、微量に残った分のみを蒸発させればいいのに対して、鉱油の場合はパーツのべたべたを除去するのがとても面倒)、Cray-2以来の実績から、フロリナートはその後も浸漬液冷の主流となっている。
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