スキーム (数学)
(スキームの圏 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/24 14:47 UTC 版)
数学におけるスキーム(あるいは概型) (英: scheme) とは、可換環に対して双対的に構成される局所環付き空間である。二十世紀半ばにアレクサンドル・グロタンディークによって導入され、以降の代数幾何学において任意標数の代数多様体を包摂し、係数の拡大や図形の「連続的」な変形を統一的に取り扱えるような図形の概念として取り扱われている。さらに、今まで純代数的な対象として研究されてきた環についてもそのアフィンスキームを考えることである種の幾何的対象として、多様体との類推にもとづく研究手法を持ち込むことが可能になる。このため特に数論の分野ではスキームが強力な枠組みとして定着している。
スキームを通じて圏論的に定義される様々な概念は、大きな威力を発揮するが、その一方で、古典的な代数幾何においては点とみなされなかった既約部分多様体のようなものまでがスペクトルの「点」になってしまう。このためヴェイユ・ザリスキ流の代数幾何学(これ自体大幅な形式化によって前の世代の牧歌的なイタリア流代数幾何に引導を渡すものだったのだが)を習得して研究していた同時代の学者たちからは戸惑いのこもった反発を受けた。
定義
環のスペクトル
可換環 A に対して、 A の素イデアルの全体の集合 Spec(A) は A のスペクトルとよばれる。A の部分集合 M に対し
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原文と比べた結果、この節には多数の(または内容の大部分に影響ある)誤訳があることが判明しています。情報の利用には注意してください。「環のスペクトル」も参照
アレクサンドル・グロタンディーク (Alexander Grothendieck) は、決定的な定義を提唱し、実験的示唆と部分的な発展の出発点をもたらした。彼は可換環のスペクトルを素イデアルがザリスキー位相に関してなす空間として定義したが、このスペクトルに環の層を付け加えた組をスキームとしたのである。全てのザリスキー開集合へ可換環を対応させ、その集合の上に定義された「多項式函数」の環を考えた。これらの対象は「アフィンスキーム」であり、次に一般的なスキームはいくつかのアフィンスキームを互いに「はり合わせる」ことにより得られる。一般的な多様体はアフィン多様体を貼り合わせることにより得られるという事実の類似である。
スキームの概念の一般性は、最初は批判された。幾何学的な解釈を直接持たないので除かれたスキームもあり、これらがスキームの概念の把握を困難にしていた。しかしながら、任意のスキームを考えるとスキームの圏はより良い振る舞いをもつようになる。さらに、例えばモジュライ空間のように、自然な見方、考え方が「非古典的」なスキームへと導いていった。多様体ではないこれらスキーム(単純に多様体から構成することができないスキーム)の出現は、古典的なことばで提出可能であった問題に対しても、この問題の新しい基礎付けが緩やかに受け入れられていった。
ピエール・ドリーニュ (Pierre Deligne) やデヴィッド・マンフォード (David Mumford) やミハイル・アルティン (Michael Artin) による、本来はモジュライ問題である代数的空間や代数的スタックでのその後の仕事により、さらに現代代数幾何学の幾何学的柔軟性を拡大していった。グロタンディークは、スキームの一般化として、環付きトポスのあるタイプを提唱し、環付きトポスの次に彼が提唱した相対スキームは、M.ハキム (M. Hakim) により開発された。最近の高次代数スタックやホモトピックな導来代数幾何学は、さらに幾何学的直感の到達範囲を拡大する必要があり、ホモトピー理論に近い精神を代数幾何学へもたらす。
スキームの圏
原文と比べた結果、この節には多数の(または内容の大部分に影響ある)誤訳があることが判明しています。情報の利用には注意してください。スキームからアフィンスキームへの射は、次の反変な随伴函手により、環準同型のことばで完全に理解される。全てのスキーム X と全ての可換環 A に対して、自然な同値関係
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原文と比べた結果、この節には多数の(または内容の大部分に影響ある)誤訳があることが判明しています。情報の利用には注意してください。詳細は「加群の層」を参照
可換環 R を研究するときに可換環論において R 加群が中心的なのと同様に、構造層 OX を持つスキーム X の研究において OX 加群が中心的である。(OX 加群の定義については局所環付き空間を参照。)OX 加群の圏はアーベル圏である。特に重要なのは X 上の連接層であり、これは X のアフィン部分上の有限生成な(通常の)加群から生じるものである。X 上の連接層の圏もまたアーベル圏である。
スキーム X の構造層 OX の切断は正則函数と呼ばれ、これは X の各開集合 U 上で定義される。OX の可逆部分層は、O ∗
X と書かれるが、乗法について可逆な正則関数の芽のみからなる。ほとんどの場合、層
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スキームの圏
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/26 20:45 UTC 版)
局所環付き空間の射を射とすると、スキームは圏をなす。 スキームからアフィンスキームへの射は、次の反変な随伴函手により、環準同型のことばで完全に理解される。全てのスキーム X と全ての可換環 A に対して、自然な同値関係 Hom S c h e m e s ( X , Spec ( A ) ) ≅ Hom C R i n g ( A , O X ( X ) ) {\displaystyle \operatorname {Hom} _{\rm {Schemes}}(X,\operatorname {Spec} (A))\cong \operatorname {Hom} _{\rm {CRing}}(A,{\mathcal {O}}_{X}(X))} が成り立つ。 Z は環の圏の始対象であり、スキームの圏は Spec(Z) を終対象として持っている。 スキームの圏は有限の積を持っているが、注意して扱わねばならない。(X, OX) と (Y, OY) の積スキームの基礎となる位相空間は、位相空間 X と Y の積にいつも等しいとは言えない。実際、積スキームの基礎となる位相空間は、位相空間の積よりも多くの点を持っている。例えば、K を 9つの元からなる体とすると、Spec K × Spec K ≈ Spec (K ⊗Z K) ≈ Spec (K ⊗Z/3Z K) ≈ Spec (K × K) であり、K はたった一つの要素しか持っていないが、Spec K × Spec K は 2つの要素を持っている。 スキーム S {\displaystyle S} に対し、 S {\displaystyle S} 上のスキームの圏もファイバー積の構造を持ち、ファイバー積は終対象 S {\displaystyle S} を持つので、このことから有限な極限を持つ。
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